※※第97話:Make Love(&Possessive).43







 外の掃除を終え、ナナは軽く奥も掃き掃除をしてから、レジへと戻った。


 「じゃあナナちゃん、あたしはちゃちゃっと、ドリンク出してくるわ!」
 「あっ、よろしくお願いします!」
 その後、今度は店長さんが奥へと入って行きました。



 「おお…!お店の中はやっぱり、あったかいね…!」
 両手を擦り合わせながら、暖をとるためにもナナはホットドリンクを前へと押してみる。


 そのとき、

 …――――ダンッ

 牛乳一本を手にした、お客がレジへとやってきた。





 「ありがとうございます!」
 すぐに駆けつけたナナは、

 ……ピッ

 バーコードを読み取る。




 そして値段を告げると、

 「それさぁ、パッケージが赤ぇんだよね、」

 ジーンズのポケットから財布を出しながら、男の客が口を開いた。




 「赤いと何かおかしいんですか?」
 ナナはまじまじと、“GEMUMILK”と書かれたそのパッケージを見つめる。

 「他のは青ぇじゃん?」
 男の諭しにより、売り場のと見比べてみたナナは、

 「なるほどーっ!」

 納得した。




 その間に男は一万円札を出してきたため、明らかに多すぎる釣り銭を、ナナは間違えないよう慎重に手渡す。


 「袋は要らねぇよ、」
 「あ、ご協力ありがとうございます、」
 そのうちに、何だか大きくて長いバッグを抱えた金髪の男は、片手に一リットルの牛乳パックを持つと、


 「あんた、一秒たりとも俺に見とれなかったね、」


 笑って、そう言い残し、静かに店を出ていった。








 「……はい、それはもう、あのひとにはしょっちゅう見とれちゃいますけど、」
 呆れたように呟いたナナは、またしても、

 …………ポッ、

 自分で言って自分で、恥ずかしくなっちゃったのでした。














 ――――――――…


 「見ぃつけた、」

 男は笑いながら、呟く。



 「なんだよ、案外近くにいたじゃん。」

 そのまま笑いながら、白い息を吐き上げ歩いていると、


 「おい!屡薇(ルビ)!」

 息を切らした男性の、大きな声が響いた。






 「なに?」
 金髪のその男、屡薇は振り向き、
 「なに?じゃねえよ!お前がちっとも帰って来ねーから、捜しに来てやったんだろ!?」
 わりと赤みがかった短髪の男性は、彼へと駆け寄ってきた。


 「ああ、忘れてた…」
 「いいから早く、スタジオに戻れよ!」
 少しも悪びれた様子がない屡薇に、おそらくバンドメンバーである青年は怒りの声をぶちまける。


 「はいはい、」
 「お前、これで何度目だと思ってんだ!?」
 そして、明らかに周りとは違う雰囲気で、ふたりは歩きだした。







 ……はい、おそらくどころか十中九十、ナナはこっちの漢字は書けないでしょうね。

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