※※第97話:Make Love(&Possessive).43






 明らかに挙動不審だったため、ギクリとしたナナは恐る恐る振り向く。


 そこにはあの、土曜日の花嫁が立っていた。





 「な、何でしょうか?」
 心底では腹が立って仕方ないのだけど、ナナはなるべく平常心で返す。

 すると女性は、

 「ほんとうに、すみませんでした……」

 深々と、頭を下げたのだった。





 「大丈夫です、そんなことをする必要はないので、どうか頭を上げてください。」
 ナナはきっぱりと、言い放つ。

 「………………。」
 黙って元花嫁は、顔を上げると、

 「あなたが、羨ましいわ…」

 そう呟いて、静かにもときた道を去っていった。






 「…あの人、大丈夫かなぁ?」
 気休めを言う必要もないと悟っていたナナは、小さく言葉にしてから掃除を再開した。

















 元花嫁は、トボトボと、既に日が落ちた道を歩いていた。


 そのとき、

 …――――――ガッ!

 いきなり何者かに、腕を強く掴まれたのである。



 「……いっ!?」
 突然の出来事に、何事かと顔をしかめると、


 「あんた最近、ここ、赤く染めた?」


 男の声がした。





 「はぁ?」
 思いっきり眉間にシワを寄せ、そちらを見ると、

 「血の匂いがすんだよねぇ…」

 薄暗い中でも眩しいくらいの金髪で、男はオンナの指先へすっとした鼻を近づけている。
 しかも、彼はこんな時間帯にも関わらず、サングラスを掛けているのだ。



 ゾクリとしたオンナは、

 「何すんのよ!」
 青ざめ、力づくで腕を離すと走り去った。
 指先に血が付着していたことには、本人ですら気づいていなかったというのに。






 「……乱暴な女って、萎える。」
 男は呆れたように口にし、オンナが歩いてきた道を歩いて行きました。

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