※※第97話:Make Love(&Possessive).43






 「いらっしゃいませ〜!」

 この日、99円均一祭なるものを開催している川口さんは、エプロン姿で営業スマイルを振り撒いていた。

 「ここの店長、実はね…」
 「まあ…」
 人の噂とは恐ろしいもので、尾びれだかが付いちゃった川口さんは結局、SMクラブの常連客であると奥様方からは語られております。







 そのときだった。


 「あのさ、ここ、ゲムミルクは置いてねえの?」


 川口さんの背後より、おそらくお客様が声を掛けてきたのだ。




 「あっ、大変申し訳ございません、当店では取り扱っておりませんでして、」
 申し訳なさそうに、川口さんは振り向く。







 そこには、千国先生とは比べものにならないほどかっこいいサングラスを掛けた、金髪のスラリとした男性が立っていた。
 元は金ではないであろうなその髪は、ミディアムロングで、男はギターのケースを抱えている。


 「あっそ、残念…、コンビニにならあっかなぁ?」
 特にクレームを言うこともなく、呟いた男はスーパーを出ていった。









 「……ハーフか、」
 店内においては珍しく真剣な表情で、川口さんは呟く。


 周りの奥様方は、もしかしてSMクラブの人かしら?、そんなことをコッソコソと、噂しちゃってたのかもしれません。
















 ――――――――…

 「いやぁ、ナナちゃんはほんと、働き者だわぁ!」
 本日、共にお店を回しております店長さんは、感嘆の声を上げている。

 只今ナナは、12月の寒さなんて何のその、ほうきとちりとりを持ってだいぶ汚れていた犬走の掃除に取り掛かっていた。







 「おおお…!あと50分ほどしたら、薔に会えるよぉ…!10分ほど前に会えたばかりだけど…、早く会いたいよもーうっ!」
 掃除をしながらの呟きが、やたらと乙女チックである。

 呟いてみた後に、自分で自分が恥ずかしくなってしまったナナさんは、

 (いいいかんいかん!)

 真っ赤になって、首をブンブンと横に振った。



 そこへ、

 「あの……」

 誰かが声を掛けてきた。

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