第九話:光放つ失望







 切なく痺れる腰は自然と跳ねていた、からだじゅうのちからは抜けているのに不思議で、とてもいやらしい感覚が這い上がる。

 「言葉にされてまた感じた?」
 面白そうに微笑み、兄は再びゆびを深く入れてきた。
 そのゆびを膣できつく狭めているのが否応なしにわかってしまい、梨由は恥ずかしさに余計淫らを感じている。
 「や…っ、やだ…っ、……武瑠…っ、またっ……そこ…っ、出ちゃう…っ」
 ゆびを抜き差しされだした彼女は再び、潮吹きをしてしまいそうだった。
 呼び方については一瞬、躊躇った、名前で呼ぶべきか“お兄ちゃん”と呼ぶべきか。
 その上で、恋人同士になったのだと言ってくれたのは彼なのだから、くすぐったい気持ちと共に甘く名前で呼んでいた。

 「出せば?とっくにびしょびしょだし」
 わざと中でゆびを回してみせた武瑠は、何も躊躇わない。
 音を聞かせて蜜を掻き出す。
 「それから、梨由はまだ彼氏と別れられてねぇんだから……“お兄ちゃん”って呼ばなきゃダメだろ?」
 何も躊躇わないまま、兄はいとも容易く妹の痛いところを突いた。
 鼓動にまで汗が滲みそうな梨由の脳内から、恋人同士になれた夢のような昨夜がぼんやりと遠ざかる。

 きっと、見越していた、ゆびの動きには一抹の動揺もなかったから。
 名前を呼んだ梨由の表情はたちまち高揚した、でも名前を呼ばれても兄の表情は何も変わらなかった。
 そのことが揺るぎない冷ややかさを湛えていた。



 「あっっ!」
 またしても達してしまった梨由は、大きく潮吹きをした。
 「止めてほしいならちゃんと、“お兄ちゃん”にお願いするんだぞ?わかったか?」
 潮吹きの最中にも素早くゆびでヴァギナを擦り、武瑠は穏やかに諭す。
 その言い方は、恋人へ向けるものではない、妹へ向けるものに戻っていた。

 「あ…っあっ、ああ…っんっ」
 布団を強く掴み寄せた梨由は、ますます躊躇った。
 “お兄ちゃん”と呼べば、隣の部屋に聞こえてしまう、そういうプレイをしているのだと気を利かせて隣人に思わせてくれたのは――鉄太だった。

 彼氏にあそこまでさせておきながら、兄が与えてくれる快楽に溺れてゆく。
 つまるところはいつも、兄のことしか考えていない。
 好きなひとはただ一人、死ぬまでそばにいたいひとも、ただ一人。

 最低だと思った、兄以上に自分が最低だと思った。
 先に「最低だとは自分でもわかってる」と口にした兄のことを、ずるいとも思った。


 ビュッ…ビュクッッ…

 「っっんあっ…っ、あっっ」
 もはや、イけそうだと感じるだけで、梨由は潮吹きをしていた。

 武瑠は楽しげに笑いながら、

 「きれいなくせにすっげえ下品」

 と言って、ゆびさきでGスポットを突ついた。

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