第七話:無二の累卵
「ん…っ!あ…っ」
濡れたその場所へと触れられただけで、梨由にはえもいわれぬ快感が突き上げ背筋をふるわせた。
放されたくちびるからは荒々しい息が上がり、薄暗がりに艶めく。
妹の秘部を下着越しに撫でながら躰を起こした武瑠は、傍らへ無造作に解き捨ててあったネクタイを手に取った。
グチュグチュと、ゆびさきは理性を切り裂くように、確実に蜜の音を捕らえ響かせていた。
グッッ――――…!
かと思ったら、いきなりソコからゆびは放れ、梨由は目元にネクタイを押し当てられ微かな光さえ奪われた。
「え…っ!?あ…っ、……お兄ちゃんっ……?」
快感の後に戸惑いが押し寄せ、頭を持ち上げられた梨由は後ろで強くネクタイを結ばれ目隠しをされてしまう。
突然やってきた暗闇より、兄の姿が見えなくなったことに恐怖を覚えた。
その恐怖は幼い頃、武瑠の帰りがいつもより遅い夕暮れや、友達の家へ泊まりに行ってしまった夜に、兄がそばにいなくて感じた恐怖を思い起こさせた。
はじめから何かを見失っていたにしても、そばにいるのに見えなくなることすらこんなにも恐ろしいことだったのか。
「やだ…っ、やだよっ……お兄ちゃんっ……」
目隠しを解きたくて伸ばしかけた手はぐいと掴まれ、シーツへと強引に引き戻される。
「言ったよな?梨由、これは罰なんだよ」
視覚を奪われているため兄の表情は窺えなくとも、脳裏に描くことができた、すべてを奪う妖美な微笑みを。
いやらしいくらいに優しく諭す声が、聴覚を研ぎ澄ませてゆく。
「黙って感じてろ」
武瑠は妹の耳もとで、そっと命じた。
「……っっ」
梨由はこの上なくぞくぞくした、兄の姿が見えない恐怖は、視覚以外で兄を感じる悦楽へと取って代わられた。
じんわりと涙が滲んだネクタイからは、甘くて苦い、仄かな煙草の匂いがした。
…ッ…グチュッ――――…
武瑠のゆびは再び、梨由の秘部を捕らえた。
それも、パンツをずらし直に蜜を絡めだした。
「あ…っ、あ……あっ」
嬌声は上げてもいいものかどうか、迷っている余地などこれっぽっちも与えられなかった。
梨由は自分が自然と上げてしまう甘ったるい声にも、興奮している。
「聞こえるね?えっちな音」
くすりと笑った武瑠は、妹の耳もとへ何度もキスをした。
「ん…っあっ、あ…っ、ん…っ」
兄のゆびと蜜が奏でる淫音に、リップ音が混じる。
膨れ上がるクリトリスをゆびでやわらかく執拗に撫でられ、気持ちがよすぎて堪らなくなる。
「何だかんだ言っても、梨由はお兄ちゃんとの快楽には逆らえないよな?」
入り口を拡げ始めた武瑠は、さらなる水音で妹の聴覚を刺激し、囁いたのだった。
「それでいいんだよ……おまえは俺のものなんだから」
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