第五話:焼き付く咎







 奥へと向かって幾度となく突き上げられ、息が止まりそうだった。
 「あ…っあ、あんっ……」
 喘ぐことが先決か呼吸を手繰り寄せることが先決か。
 どちらにせよ兄の前では何も考えられなくなってしまう。
 「大好きなお兄ちゃんの舐めちゃったから、いっぱい濡れたね?梨由ん中」
 押さえつけるようにして深く、音を聞かせて突きながら武瑠は妹の耳もとで息を乱す。

 「おかげで、すごく狭いけど出し入れし易いよ…」
 触れた吐息にぞくぞくして、梨由は兄を締めつける。


 「は…っ、あ…あっあ、ん」
 妄りがわしい音は絶え間なく響き、呼吸は荒くなる一方、声は上擦る一方で、動きはだんだんと速く激しくなってゆく。
 乱れきった布団の上で、皺に混じった体液の染みが薄明かりに照らし出される。
 太股に兄のゆびが食い込み、持ち上げられるとさらに深くを突いて擦られた。

 「あ…っ、い…やっ、お兄ちゃあ…っ」
 今にも達してしまいそうな梨由は、兄の背中へゆびを立てる。
 「躰は正直だからよくわかるな、梨由……嫌じゃなくて、ただ気持ちいいんだろ?」
 喘ぎにより、唾液が滴り濡れた妹の顎をいきなり持ち上げると、武瑠はそのくちびるを奪う。

 「だったらお兄ちゃんも一緒だ…」


 重ねたくちびるは濡れて、動いて、互いの熱情を流し込んだ。
 「ん…っ、ふ…っ」
 背中へまわしていた手を強く掴まれ、布団へと押し当てられ、ゆびを絡められる。
 兄の鼓動は妹の中で増す。
 「は…っ」
 窒息寸前で、しばしふたりは吐息でのキスに切り替え、

 「…――――――っん…く」

 また深く、舌を絡めてくちづけを交わした。


 血の繋がった兄妹たちは、離れがたく、ただただ深く、深く愛しあっていた。
 深く愛しあいすぎているからこそ、ただのお遊びと割りきってふたりは情事を重ねる、密に重なりあう。
 そのことにいったい何の意味があるのだろうか?
 躰を重ねれば重ねるほど、許されるはずのない狂った愛に全ては蝕まれてゆくというのに。
 お遊びと割りきることができなくなるというのに。

 血の繋がりは、消せない、それは何よりも確かで根本からあまりにも濃厚で、だからこそ恐ろしいほどにふたりは孤独だった。
 どれだけ愛しあおうとも、どれだけ躰を重ねようとも、

 兄と妹だからこそ、ふたりは孤独だった。

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