第五話:焼き付く咎
じゅっ……という厭らしい音が、仄かな薄暗がりの中へと響いていった。
外の明るさはより一層、華やかとなり部屋を彩っているように思える。
「……っ」
梨由が思い切って吸ってみただけで、武瑠は躰をふるわせてくれた。
口内では兄の自身もふるえて、初めての味を貪るために梨由の舌はそろそろと動きだす。
「どう?お兄ちゃんの美味しい?」
妹のあたまを撫でながら、武瑠は妖しげに笑って確かめる。
「は……」
吸いつきながらくちびるを離していった梨由は、思わず吐息を漏らし、またそっと上下に撫でながら視線を落として応える。
「うん……」
「じゃあ、もっといっぱい舐めて、味わえよ…」
彼女のあたまを後ろから押さえつけ、武瑠は促し、
「ん…っ、んっ……」
否応なしにさらに深く、梨由は咥え込んでゆくこととなる。
必死になって、兄の鼓動を追いかけて喉を鳴らしている。
「夢にまで見たけど…やっぱり本物が一番エッチだね」
武瑠は妹の髪をゆびに掛け、少し引っ張りながら離して揺らし、また後ろからあたまを押さえつける。
「梨由は初めてする事なのにね……」
「…――――っ」
わざと経験の差を思い知らせようとしているのか、ほんとうにそれだけなのか、梨由にはわからないまま、導かれるままにただ夢中になって兄を扱いていた。
背筋を針のような、恍惚が突き上げる。
先端は喉まで到達し、息をするのもままならない。
苦しいけれど、これは抗うことのできない苦しさだ、止まらないし止められない――理性が鳴らす警鐘も一緒に梨由は飲み下してゆく。
「はぁっ……」
上下に動く妹のあたまを後ろから押すように撫で、熱く息を上げた武瑠はもう我慢がならない様子だった。
「こんなに余裕ねぇの、俺も初めて…」
兄が吐息混じりの言葉を落とした直後に、喉の奥ずっと深くへ目掛けて迸りが放たれた。
驚き、激しくふるえてしまった梨由だが、あたまは後ろから押さえつけられているため嚥下するしかできない。
何度か大きく動いた喉が、熱に支配される。
「全部飲めた?」
あたまを優しくよしよしして、問いかけてくる武瑠の声色はまたしても、小さな妹をあやすような言い方に戻っていた。
「んっ……」
押さえつける力が緩められ、兄に確かめてもらうために、ゆっくりと梨由は口を離していった。
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