第五話:焼き付く咎







 思わず視線を奪われていた妹の頭を、近づけるように撫でながら武瑠は笑って言った。

 「触っていいよ?ほら」


 まるでその卑猥な行為が、子供同士の戯れであるように錯覚させるかのような、あやすみたいな言い方だった。
 息を呑んだ梨由は、そろそろと手を伸ばす。

 触れる手前に、まだ小さい頃、兄と一緒にお風呂へ入った時ふとここを意識してしまう瞬間があったことを、梨由は思い出していた。
 自分のとはまったく形が違っていたから、ただの興味からくる意識だと思っていたが、ひょっとしたらあの頃から自分はもう、兄妹という関係からではない特別な意識を兄に持っていたのかもしれない。

 恐る恐る触れてみる。
 あたたかくて硬くて、梨由は恍惚の息を漏らす。

 「ゆっくり、上下に擦ってみな……」
 武瑠は囁いた。
 先ほどとは打って変わってエロティックな言い方に、梨由の手はおもむろに自制を解き始める。
 「お兄ちゃんの……すごい、硬くなってる……」
 自分がこんな素直な感想を言えているとは、自分でも驚くくらいだ。

 下から支えるようにして、兄に言われた通りゆっくりと上下に擦ると、彼自身は気持ちよさげに妹の手の中でふるえた。


 「梨由のえっちな姿、いっぱい見ちゃったからな」
 髪を滑り落ちた武瑠のゆびは、くちびるへと辿り着く。
 乱れた息を零れさす妹の顎をそっと持ち上げ、その口内へと、兄は親指を含ませてくる。

 「興奮してんだよ、お兄ちゃんも……」




 「は……」
 梨由は兄を見上げ、やや虚ろなその瞳の中に兄だけを映しながら手を動かしていた。
 親指が舌を撫で、これからたくさん使うことになる唾液を誘う。

 「怖い?梨由」
 熱の隠る視線を落とし、武瑠は妹へと優しく確かめた。

 「怖くなかったら、そろそろ舐めてほしいな」




 怖いのか、怖くないのか、梨由にさえもわかってはいなかった。
 ただ、わかっていることは、例え怖かったとしても恐ろしいほどに、躊躇いを感じてはいないということだった。

 愛しさに導かれ、兄の親指に導かれて、梨由は舌を伸ばす。
 手で持って、くちびると引き寄せあうように。

 親指を離して、武瑠は微笑んだ。


 「ん……」
 梨由は兄の自身へと、また恐る恐る、今度は舌を這わせた。

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