※※第88話:Make Love(&Love sick).35






 「おや?」
 走っていた醐留権は、裏口の近くにコソコソと立っている、こけしちゃんを発見した。

 (本当にいたじゃないか!)
 薔にちょっとした感謝の気持ちを抱いた醐留権は、こけしちゃんへと駆け寄る。



 「さっ、桜葉、」
 そして若干、息を切らしつつも後ろから声を掛けると、

 「しぃぃっ、」

 人差し指をくちびるに当て、こけしちゃんは密やかに言いました。

 「ゾーラ先生ぇ、今ねぇ、すごぉく大事なとこなのぉぉ。」

 と。





 「は?」
 眼鏡をくいっとさせた醐留権が、こけしちゃんの後についてコソコソと外を見ると、

 「だから、本当に、ごめんね?お願いだから、怒らないで…」

 そこでは、葛篭が、携帯で誰かと話し込んでいたのである。






 「葛篭先生じゃないか…」
 「うんぅ、でもねぇ、ゾーラ先生ぇ、何か話の様子がおかしいのぉぉ。」
 コソコソと話す、醐留権とこけしちゃん。



 「うん、うん、ごめんね、うん…」
 葛篭は俯き、必死に謝罪を繰り返し、

 「どぉもねぇ、相手は彼氏みたいなんだけどぉ、さっきから謝ってばっかなのぉぉ。」
 「なるほど…」

 こけしちゃんと醐留権も、必死に耳を傾けます。





 そのときふたりは、信じ難い言葉を耳にしたのだ。

 「うん、わかった、ごめんね?月曜日にはちゃんと、50万振り込むようにするから…」








 「…………!?」
 こけしちゃんと醐留権は、耳を疑ったのだけど、

 「うん、じゃあ明日、19時に“デインティ”でね。」

 おそらくデートの約束をして、葛篭は電話を切った。






 「はぁ…」
 携帯を力無く下ろし、溜め息をつく、葛篭。








 「まさかとは、思うが…」
 「結婚詐欺ってやつぅ?」

 息を呑んだこけしちゃんと醐留権は、葛篭が戻ってきたため近くの階段を素早く駆け上がった。



 「葛篭先生ぇ、美人なのにずぅっと彼氏いなかったからぁ、必死なのにぃ。詐欺なんてひどぉいぃ。」
 こけしちゃんはいたく、憤慨しております。

 「そう言えばさっき廊下で会った暮中が、葛篭先生を探していたな、」
 「えぇぇ?萌えてる場合じゃないんだけどぉ、何そのふたりっきりのシチュエーションぅっ。」
 「桜葉!?」

 こけしちゃんは複雑な心境でもやっぱり萌えてしまい、醐留権は帰ったら薔に電話をしてみようと心に決めたのでした。

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