※※第85話:Make Love(+Intercourse).32







 ナナの履歴書だけを購入し、薔はコンビニを出た。
 ちなみに、いつものではなく、一つ遠いコンビニである。


 空は、色を持たないかのような、白に近い灰色だ。






 歩きだした、薔の背後より、


 「バイトでもすんの?」


 男の声が、響いた。






 特にどうということなく、薔が振り向くと、そこにはなかなかイケメン青年が立っておりました。

 薔は言った。

 「なんだ、彦一(ひこいち)か、」








 「万年包茎野郎が、俺に何の用だ?」
 「ひどっ!確かに剥けてないけど!3年ぶりに会えた従兄弟に、それはないんじゃないの!?」

 憤慨する、彦一。

 それより、え?従兄弟?



 「俺に従兄弟なん、いねぇよ。」
 顔色一つ変えず、薔は返した。



 「どうしちゃったの、薔は…、昔はあんなに小っちゃくて、天使みたいに可愛かったのに、でも今は、彦兄ちゃん泣いて戦くくらいかっこよくなっちゃったよ…」
 思い出しているのか、ホロリとする彦一。

 「お前は今でも、ちっせえみてぇだな、」
 「どこのこと言ってんの!?」






 久しぶりの再会で、思い出話に花が咲くかと思いきや、

 「それより、薔さ、バイトはどっちがすんの?お前がすんの?彼女がすんの?」

 笑いながら彦一は、こんなことを言ってきたのだ。

 「金には困ってないだろ。あれほどまでに莫大な遺産、お前が一人で相続しちまったんだから。」









 「誰にでも無関心だったお前が、なんで女と住んでんの?やっぱりあの女も、金目当てなのか?」

 そのままつづけた、彦一だったが、


 ガッッ――――――…!

 勢いよく歩いてきた薔に、強く胸ぐらを掴まれた。



 「おい、」

 身を切り裂くほどの鋭い視線で、薔ははっきり口にした。

 「あいつのことは何も言うんじゃねえ、俺のことなら構わねぇが、」






 「いいいや、悪かった、この状況だと、お前のことも何も言えないよ…」
 彦一が青ざめると、薔は手を離した。

 「もう俺には一切、構うんじゃねーよ。」
 そして背を向け、歩き出そうとしたのだけど、

 「おれ、今、ニューヨークにいるんだ、」

 彦一は、おそらくそれが一番の目的だったのであろう、おぞましい事実を口にした。


 「そこで偶然、あいつを見たんだよ。」

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