※※第85話:Make Love(+Intercourse).32







 「前よりだいぶ、解けてんな、」
 「ほほほんとですかぁ!?」
 「あぁ。」

 答え合わせを終えた薔の隣、ナナは歓喜の声を上げた。


 「おおおっ…!わたくしもっと、お勉強します!」
 意気込んだナナは、数学へ取りかかった。



 「えーと…」
 真剣に問題と向き合うナナを見ながら、薔はクスッと笑うと、

 「おまえ、火曜日に面接だったよな?」

 と、確認してきました。


 「はいっ!そうです!」
 ナナは問題集へ目を落としたまんま、元気よく答える。


 「履歴書の書き方、知ってんのか?」
 「りれきしょ…?」


 はい、キョトンと顔を上げたナナは、未だかつて履歴書を書いたことがないのです。
 職歴はないでしょうが、学歴は一枚じゃ到底足りないよ?



 「仕方ねーな、俺が一緒に書いてやるか、」
 「うわぁ!ありがとうございます!」
 喜び勇む、ナナ。
 このまま一緒にお勉強タイムと思いきや、薔は立ち上がってしまった。


 「あれ?どちらへ行かれるのですか?」
 ナナはまたしても、キョトン。

 「履歴書を買いに行ってくる、おまえはちゃんと勉強してろよ?」
 立派に言い聞かせ、薔はいったん奥へと向かって行きました。





 「……………、」
 ナナはポカンと、そちらばかりを見ておりますのでね、

 「ワン(ナナちゃん、お勉強)!」
 見かねた花子が、一声、活を入れたのでした。











 出掛ける支度をし、薔が戻ると、ナナはちゃんと勉強に励んでおりました。


 「ナナ、」
 彼はリビングを出てゆくまえ、笑って、言ったのです。

 「帰ったら、一緒に花子の散歩な?」

 と。




 「あ、はい、行ってらっしゃいま」
 問題集とにらめっこをしていたナナは、顔を上げた。


 ちゅっ

 瞬間、薔は覗き込むようにして、やわらかくくちびるを触れあわせたのだ。




 呆気にとられてばかりの、ナナの頭を撫で、

 「行ってくる、いい子にしてろよ?」

 微笑んだ薔は、部屋を出て行った。



 バタン――――――…




 ふらっ…

 “ナナちゃーん!”

 悶え死にを垣間見たナナへと、花子が駆け寄った。

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