※※第84話:Make Love(+Vampirism).31
キスで疼いちゃっておりますのに、ふたりは“例の”コンビニにおりました。
(またあのイケメンきたよーっ!)
いつものお姉ちゃんは、レジを打つことがままなりません。
そのとき、薔は発見した。
お姉ちゃんの名札に、“店長”の二文字を。
(おおおっ…!)
ナナは興味津々に、“アンバランスズメバチ”という長ったらしい名前で愛させているキャラクターの、一番くじコーナーを眺めております。
「おい、」
「ひぇえ…!」
薔が堂々と声を掛けると、お姉ちゃんはレジに納めるはずの千円札を床に落としてしまいました。
「どこいったかしらーっ!?」
「そこだ、」
しどろもどろになるお姉ちゃんを見ながら、薔は若干の懸念を抱いております。
「あ、あった、ありがとうございます!」
ホッと一息つき、お姉ちゃんが千円札を拾い上げると、
「俺のこいつがここで、バイトしてぇ、つってんだが、」
目の前にいた薔が、ナナのバイトの申し込みをした。
「それはどうもーっ!面接はいつがご都合よろしいですか!?」
「また落ちたぞ?金は大事にしろよ、」
面接の日取りを決め、ナナがあまりにも興味を示すためくじを一回引いて帰った。
一番が当たった。
「どうせならカップルで働いてほしいね〜、繁盛なんてもんじゃないよ〜!」
「お姉さん、並んでるけど!」
このお姉ちゃんが店長さんなら、ナナも安心して働けるね!
…………たぶん。
再びの、帰宅!
「ワゥン!」
ご主人さまが抱えて帰った、大きなぬいぐるみに花子も大喜び。
「しゃ、写真撮ってもいいですか…?」
「あ?」
ナナはキュンキュンひとしきり。
リビングにて。
「しかしこいつは、不恰好だな、」
「確かに、面白い形をしてますね…」
そりゃ、アンバランスだからねぇ。
ぬいぐるみはこの調子で、度々増えてゆくのかな?
「なんか、外もう真っ暗ですね、」
「冬だからな、」
11月ともなれば、太陽がおやすみするのもこちらでは早いもので、
やっぱり夕食の支度は、薔がすることとなりました。
ナナと花子はリビングにて、楽しく戯れたんだとさ。
ときどき、リビングへ目をやり、薔も笑っていた。
―――――――…
夕食を醐留権邸で戴いたこけしちゃんと愛羅は、ちゃんと醐留権が家まで送り届けました。
もちろん、羚亜も同行しましたよ?
「要さん…、ごめんなさい…」
帰りの車内にて、申し訳なさそうに、小さく謝罪する羚亜へと、
「羚亜、一人でどうにもできないときは、私を頼りなさい。何の為の家族だ?」
醐留権は少し厳しい口調で、言い聞かせた。
「でも…、迷惑かけたくないし…」
羚亜は俯いたのだけど、
「迷惑など掛けてはいない、心配はかなり掛けているが、」
次に醐留権は笑って、つづけたのです。
「同じ心配なら、見えない心配をするより、見える心配をしたほうがいいに決まってるじゃないか。」
と。
「ここにいるんだから、一人で何でも溜め込むんじゃない。」
醐留権はそっと、羚亜のあたまを撫でる。
「ありがとう…、」
力強い手に、泣きそうな表情を見られないようにと、
「要さん、今、運転中だけど…」
俯く羚亜は、笑って言ったのでした。
「これは、私としたことが、すまなかった、」
「はは…」
ベンツは夜を纏いながらも、光を帯びて走っていった。
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