※※第82話:Make Love(&Appetite).29










 …――棘で喉を裂いて、
   それでも愛を歌うから。

 共に歩けば大丈夫、
  例え、それが、茨の道でも。














 “あぁ、めでたしめでたし、”

 花子はとっても嬉しそうに、尻尾を振っております。


 「ごめんなさい…、ひどいこと言って、ごめんなさい…」
 ナナは泣きながら、薔へと抱きついた。

 「まぁ、俺も随分とおまえを、泣かせちまったみてぇだしな、」
 薔はナナのあたまをよしよししながら、やさしく言ったのです。

 「おあいこだな。」

 ってね。





 キュン…っ

 としたナナは、赤くなって絶句した。

 久しぶりなせいか、抱きしめられている感覚は熱く、心地は上上だ。




 「おまえ、腹減ってねーのか?」
 「なんか、もうわたし、お腹いっぱいです…」

 …お腹というより、もうちょっと上の辺りがいっぱいですけど…




 などと考えながら、強くしなやかな腕のなか、ナナは大好きな匂いに包まれておりましたが、


 ふと、

 ちゅ…

 あたまにキスをされた。




 「ん……っ?」

 心地よいくすぐったさに、ナナが顔を上げると、

 ちゅっ

 薔はその頬を両手で挟み込んで、おでこにもくちづけてくる。

 「ん…っ、」

 思わずナナは、ぴくんとふるえた。


 やわらかく、くちびるはそっとリップ音を立て、次から次へとゆっくり、くちびる以外をなぞってゆく。

 抑えきれない熱情を、呼び覚ますみたいに。





 「や…っ、くすぐったい…」
 ふるえながら、ナナは、

 ぎゅっ…

 と、シャツの上から薔の肩を、掴んだ。




 「…あ?」

 くちびるを離した薔は、ちょっと熱を持った妖しい視線で、ナナを見つめる。

 (おおおっ…!近い!もう、心臓がっ…!)
 バクバクと張り裂けそうななか、目を逸らしたい気持ちとは裏腹に、ナナは目が離せない。


 そして、

 くい

 ひどく近くで、ナナは顎を持ち上げられた。


 ツ――…

 親指が、下唇のうえを滑ってゆく。



 「ここに欲しいなら、言えよ…」
 薔は誘うように囁いて、

 ゴクリ…

 ナナは息を呑んだ。




 「キス…してください…」
 おもむろにナナがねだると、

 「どんなキスがいい?」

 更に近づいて、薔はくちびるの上で、焦らすのだ。



 「すごく、エッチなのが…いい、です…」
 恥じらい、それでもナナは応え、

 「おまえだって、溜まってんじゃねーか、」

 笑った薔はきつく彼女を抱き寄せると、


 チュ――――…


 くちづけた。

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