※※第79話:Make Love(+Make Love!).1







 劇の稽古は、至極順調に進んでいきました。

 「うわぁ…!」
 物珍しかった司は、部室の中を見て回ったりしている。



 (えーと、ここはどうやるんだろ?)
 色々考えながら、台本を眺めていたナナは、少し、横へずれようとしたのですな。



 ぐらっ

 「えっ…?」

 なぜだか足下にペットボトルが転がっていて、踏んでしまったナナはバランスを崩したのだ。



 「危ないっ!」
 気づいた何人かは叫んだのだけど、


 ぐいっ


 「大丈夫か?」


 床に倒れることなく、ちゃんと薔が支えました。




 「ああありがとうございます、って、近い!おカオ!」
 真っ赤になったナナですが、この光景を見ながら、

 (まさしく王子様ぁ―――――――――っ!!)

 周りは大感動。




 ナナをちゃんと立たせてから、

 「おい、」

 有無を言わせぬ目つきで、薔は問いただした。

 「此処にこんなん置いたのは、どこのどいつだ?」






 「も、申し訳ございません…」
 一人の演劇部員くんが、青ざめながら名乗り出た。


 「俺じゃねーだろ、ナナに謝れ。そこの窓から放り投げられてぇのか?」
 「ひぇえ…!」


 …ご安心ください、部室は一階にございますので、そこの窓から放り投げられても転がる程度で済みます!






 「す、すみません…」
 きちんと部員くんが、ナナに謝罪すると、

 「近ぇんだよ、」

 薔は不機嫌になった。



 再び部員くんは青ざめ、周りはやたらキャーキャー言っておりますが、

 「……………、」

 ちょうど部室にあったウィッグを被りながら、司はキラキラした瞳で何かを考え込んでいた。








 途中で休憩も挟まれまして、飲み物の差し入れとかもあったんですな。

 何種類かの大容量ペットボトルから、それぞれ紙コップに注いで持っていくシステムだったんですけど、

 「お前はどれがいいんだ?」

 2リットルは重いため、司に薔は問いかけた。

 「おれ、これーっ、」
 「ん、」






 「薔兄ちゃん、ありがとうっ、」

 司が選んだ炭酸飲料を紙コップに注いで手渡すと、薔はまずナナのを用意してから自分のも持っていきました。





 (あれれ?今、兄ちゃんって呼んでなかった?)
 横科の中では、ドッキリ疑惑が色濃くなる。

 (これ、ギャップ萌えなの!?とにかく萌えるよ!)
 周りは、うっとり。




 「ええ!?わたし、これがいいと思ってたんです!ありがとうございます!よく、おわかりに!」
 「いーから、はやく飲めよ、」

 こんな風にしております、ふたりの横にちょこんと腰かけた司は、

 「……………、」

 その姿を見上げながら、やはり何かを考え込んでいた。

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