※※第79話:Make Love(+Make Love!).1







 朝ご飯があまり入らなかったこけしちゃんは、念入りに歯みがきをしてから、いよいよ出掛けようとしたんです。


 「悠香もぉ、お出かけかぁいぃ?」
 なぜかスーツの上にエプロンを羽織っている母が、おっとりにおいていそいそとやってきた。

 「お母さぁん、今日はねぇ、前から言ってあったけどぉ、帰りは遅くなるからぁぁ。」
 にっこりとこけしちゃんが、最終報告をすると、

 「そうだったねぇぇ、司も今日は安泰だしぃ、気兼ねなく楽しんでおいでぇぇ。」
 母もにっこりと、返しました。



 「うんぅ。行ってきまぁぁすぅ。」
 やけにオシャレをした娘は、とっても嬉しそうに玄関を出て行きましたとさ。






 「さぁてぇ、いくら土曜日とは言えぇ、お父さぁんはいつまで寝てるんだかねぇ。」
 母はニコニコと、寝室へ向かい、

 「ニ゛ャー、」

 ゲイちゃんもなんだかんだで、兄貴と同じ内容を納得しておった。


 つまりそれは、親子の相(さが)だよ!
















 ――――――――…

 「…おい、」

 パジャマ姿の司をソファへ寝かせてから、薔は呆れ気味で言いました。

 「なんでおまえは、上しか持ってこなかったんだ?」






 「すみません…、わたし、適当に選び過ぎました…」
 申し訳なさそうに、ナナはしょげる。
 彼女が持ってきた司の服は、両方とも上に着るものでした。


 「ここまで適当だと、逆に可愛さが勝るな。」
 「えええ!?」
 さらっと言われた薔の一言に、すぐさま真っ赤になった、ナナ。



 「しかしこいつは、いつになったら起きんだ?」
 「そうですね…、」

 こんな風に交わしておりますふたりは、本日も学校で、劇の稽古があるのですよ。




 すると、

 トコトコ

 とやってきた花子が、

 ペロペロ

 と司の頬を舐め始めたのだ。



 (かわいいっ…!)
 わんことちびっこなので、ナナはキュンとした。



 「んんんっ…」

 くすぐったそうに目を覚ました司は、

 「ああっ!ワンちゃんだぁーっ!」

 寝起きとともにはしゃぎだし、

 「かわいいーっ!」

 がしっ!

 花子の背に乗っかった。




 “なんなのこの子!私、ご主人さまにすら乗られたことないのに!”
 花子は憤慨した。




 ぐいっ

 すぐさま司を引っ張り上げた薔は、

 「おい、」

 険しい表情で言いました。

 「だれが乗っていいと言った?花子は女だぞ?」




 …うん、君はけっこういつも、ナナに乗っとるけどね。
 まぁ、シチュエーションが違いすぎるもんね。






 「あーっ!薔兄ちゃんだあ!」
 「お前の兄ちゃんは眼鏡だ。」

 またまた大はしゃぎの司と、不機嫌に言い聞かせる薔を見ながら、

 (しゃ、写真…)

 と、ナナは思っていた。




 花子は、トロンとした目つきで嬉しそうに尻尾を振っておりました。
 ご主人さまに、女って、言われたからね!

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