第68話:Love!(vs Evil).44







 (そうか、愛羅さんも、眠ったままなんだな…)
 教室から外を見る羚亜は、そのことを考え出すといてもたってもいられなくなってしまった。

 しかし、相手の条件が薔の命と引き換えなので、この想いを口にはできずにいる。




 「悪魔というものは、後先考えないのだろうか?この街の人々から魂を奪っても何れ世界は広い、何らかの波紋は起きるというのに。」
 「ゾーラ先生ぇ、さすがぁぁ。」
 みんなして教室で、いったん待機をしております。



 「マサとハニーさんは無事ですノデ〜、娘さんに何かをお伝えするように言われたのデスガ〜、見事に忘れマシタ〜。」
 「えぇーっ!?」
 あまりきちんとはしていない報告をしたハリーの前、呆れかえるナナ。




 「………………、」
 薔は黙って花子を撫でながら、窓の外を眺める羚亜を見ていた。




 羚亜はずっと、何かを考え込んでいたのだが、

 「俺、ちょっとトイレに行ってくる。」

 ぎこちなく笑い、教室を出ていった。





 それを見計らったかのように、

 「ナナ、」

 薔がナナを呼び寄せた。

 「おまえ、こっち来い。」





 「どっ、どうなさいました?」
 ドキッとしたナナは、パタパタと彼に駆け寄って、

 ぐいっ

 強く抱き寄せた薔は、耳元で囁いた。

 「おまえのために生きると、俺は言ったよな。」








 くすぐったい感触と甘い声、そして大好きな匂いを残して、

 「すぐ戻る。」

 ナナのあたまも撫でた後、薔は教室を出ていった。


 花子は大人しく、ご主人さまを見送っていた。


 「………………、」
 なぜだかすごく引き留めたかったのだけど、引き留めてはいけないのだとナナには痛いほどにわかっていた。








 …――約束じゃなく、

     誓いだから。

 この手で護ると、決めたから。

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