第68話:Love!(vs Evil).44
「なにすんだよ、近ぇだろ?」
「………………。」
薔はまったくもって動じておりませんが、ふたりの距離は、今にもキスできちゃいそうなんです。
(はわわぁ!近いよ!醐留権先生!)
こけしちゃんに押し倒されたまんま、慌てふためく、ナナ。
「花子さま!よい子は見ちゃダメです!」
「ワゥン!」
何を勘違いしているのか、羚亜は花子の目を両手で覆った。
“何すんのよ!”と花子は憤慨しておりますが。
そんでもって、
「あぁぁぁ、」
こけしちゃんの中では、悪魔による何たら云々に、腐の本能が圧勝した。
「ゾーラ先生ぇ、ダメぇぇ、」
おっとりにおいてのいそいそで、立ち上がったこけしちゃんは、
「この世界では薔くぅんをぉ、襲っちゃダメぇぇっ!」
ドンッ―――――…!
彼氏を突き飛ばした。
「ゾーラ先生ぇ、しっかりしてぇぇ?できればもう一回見たいけどぉ、薔くぅんにはナナちゃぁんがいるんだからぁ、無理矢理挿れようとしちゃダメよぉぉ?」
「いや、すまない、桜葉、今ものすごく痛かったんだが、」
こけしちゃんは必死で、醐留権を揺さぶる。
眼鏡がガクガクしております。
どうやら、彼女に突き飛ばされた甲斐があり、醐留権も目を覚ました様子だ。
「………………、」
ナナをやさしく立たせたりして、おそらくこの場面で最も腑に落ちていないひとは、このひとでした。
「おい、桜葉、」
堂々と声を掛けた薔は、
「俺がそいつに、ケツ貸すとでも思うか?どの世界でヤるか知んねーが、仮にヤるとして挿れるのは俺だろ?」
かなりご機嫌ななめで、言い放ちました。
「あぁぁ、薔くぅん、腐女子の前でそれ言っちゃダメぇぇ。」
「桜葉!?」
悦びまくるこけしちゃんと、びっくり仰天の醐留権。
「うわぁ!なんだか、すごく興奮してきちゃったよ!」
羚亜くん、さすがは元やおい。
「ワン!」
※早くこの手どけなさいよ!
「あっ、あの!」
なんだかんだで頬を赤くしたナナさんは、その場をまとめようとしたのか、けっこう声を張り上げた。
「いったい、何が起きているんでしょう!?」
さすがは、君、主人公。
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