※※第62話:Make Love!(+Cinema).16







 回転寿司の後は、みんなして、近くの水族館に来たんです。

 9月上旬の水族館は、もうすぐ閉館なため催し物やなんかもやっているみたいです。




 (なんですか!?これは!)
 ナナは初めての水族館に、開いた口が塞がらない。

 「ナナちゃぁん、あっちにねぇ、ペンギンがいるみたいよぉぉ?」
 「ペンギン!?」
 はしゃぐこけしちゃんが、仰天しているナナの手を取って走っていきました。



 「魚の後に、魚…」
 「羚亜くん、それは言っちゃダメっ!」
 羚亜と愛羅は、手を繋いで歩いている。




 となると、否応なしに並んで歩いているのは、薔と醐留権で、

 「なんの因果で俺とあんたが、こんなとこ歩いてんだ?」
 「あはは、そう言わずに、手でも繋ぐかい?」

 こけしちゃんが聞いたら、たいそう悦びそうな会話をしている。


 「桜葉と繋げよ。」
 「まぁ、そうくるか、」
 結局、手を繋ぎはしなかったようで、

 「なぁ、」

 ナナがこけしちゃんと走っていったほうを見ながら、薔は醐留権に言ったのでした。

 「ありがとな。」

 と。




 「ここで言われると、照れるじゃないか。」
 立ち止まった醐留権は、本当にちょっと照れており、
 「この雰囲気で、その顔はやめろよ。」
 振り向いた薔は、呆れたように言ったのでした。






 そこへ、ナナとこけしちゃんが戻ってきたんです。

 こけしちゃんはこころのなかで、悶え死にを垣間見た。




 「薔も、見に行きますか?ペンギ」
 ンと言うより早くに、

 ぐいっ

 ナナはちょっと強引に、肩を抱かれた。

 「もういいだろ?俺はこいつと、ふたりっきりになるぞ。」

 不敵に微笑んで、薔は言ったのでした。





 「あぁ、今日は楽しかったよ。」
 醐留権が微笑み返すと、

 「えっ?あの、」

 真っ赤なナナの手を引いて、薔は出口へと向かっていきました。








 「桜葉、私たちも、ふたりっきりでドライブでもするかい?」
 「はいぃ、喜んでぇ。」
 にっこり返したこけしちゃんの手を取って、醐留権も出口へと向かったのでした。



 「ねぇ、羚亜くん、向こうも見てみよっ!」
 「ペンギンて、言ってなかったっけ?」
 羚亜と愛羅は、手を繋いで水族館のなかを、歩いていったんだとさ。





 混じり合っていた世界は、ふたりっきりの世界になった模様です!

















 ―――――――――…

 「おわぁ!高い!」

 ナナと薔は水族館からちょっとだけ離れたところにある、大観覧車に乗っていた。


 「やたらかわいい反応だな、」
 「だってすごく、景色がキレイですよ!?」
 このとき、景色に見入っていたナナは、薔を見た。


 そして、想ってしまった。


 (あ、このひとのほうが、キレイだった――――――…)





 そのまま見とれていると、

 「おまえ、ちょっとこっち来い。」

 と言われたんですな。




 「あ、はい、」
 言われた通りに、薔の隣へ座ると、

 ぎゅっ

 抱きしめられた。




 ……かあぁぁぁあっ!

 (あわぁ!いい匂い!)

 ナナが真っ赤っかになるなか、

 「おまえ、あれはねーだろ。」

 抱きしめたまま、薔は笑い出したんです。



 更なる真っ赤っかで、唖然。(by.ナナしかいない。)







 薔はしばらく笑っていたが、

 「はぁ………」

 ふと、落ち着くように深い息をすると、耳元で囁きました。

 「キス…、するか…?」




 ぎゅっ

 ナナは彼のシャツをきつく掴んでから、

 「はい…」

 素直に応えちゃいましたね。



 「キスだけな……」
 極上の至近距離で、薔が吐息みたいに告げてから、

 チュ――――――…

 ふたりはやわらかく、くちびるを重ねたのでした。







 ……あああ、

 わたし、もう、

 キスだけじゃ、イヤなんですけど!






 暮れなずむ空のなか、ナナはそう想えて仕方がなかった。

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