※※第62話:Make Love!(+Cinema).16
『ピノ太く――――――――――ん!』
スクリーンのなか、泣き叫ぶザザえもん。
「…ぅ、ぅ…っ、」
ドリンクを片手に、ナナはポロポロと泣いていた。
タイムマシンでジュラ紀にやって来てしまったザザえもんとピノ太くんとその仲間たちは、ジュラ紀を堪能していたのだが、ふとしたことから恐竜たちに神と崇められたピノ太くんが、連れて行かれてしまうという流れになっていた。
(ピノ太くんさん、はやく帰ってきてあげてよぉ…!)
この間の自分とザザえもんを重ねてしまっているのか、ナナの瞳からは次々と涙が溢れ出す。
それにしても、ナナさんよ、映画のタイトルからしてピノ太くんの名前は、ピノ太、であると思われるよ。
「…っ、…ぅく…っ、」
必死で嗚咽を押し殺し、肩を震わせながらもドリンクを手にしているナナのあれやこれやが、隣で落ち着いて観て(見て?)いる薔にとってはかなりドツボだった。
彼はナナとは正反対にか、必死で笑いを堪えると、
スッ――――――…
予め用意してきたハンカチを取り出し、さり気なくナナの手に握らせたのでした。
手を握られるかと期待だかしたナナさんは、ハンカチを手渡されてびっくり仰天。
(あわぁ!涙止まったぁ!)
ドキドキが上乗せされまくっちゃって、ぴたりとナナの涙が止まったところで、
『ピノ太く―――――――――――ん!』
歓喜の雄叫びを上げたザザえもんが、スクリーンのなかでピノ太くんと感動の再会を果たした。
…………か、感動!!
再びナナの目からは、涙が溢れ出す。
『飽きたから帰ってきたよ、ザザえもん。』
『ピノ太くん、優しい!』
いや、それ優しくないだろう、というお話なんだが、ザザえもんは感涙にむせている。
『ここじゃホットケーキ焼いてあげられないから、未来に帰ろうか。』
『うん!』
帰ろうと思えばいつでも帰れたんだ、という事実が明かされたところで、
ヴ―――――ン…
ザザえもんとピノ太くんとその仲間たちは、タイムマシンで未来へと帰還したのでした。
しかし、
『…ボク、置いてかれた。』
シャイアンだけがジュラ紀に、取り残された。
『シャイア―――――――――――ン!!』
未来でみんながそのことに気づき、ピノ太くんを除いた仲間たちがシャイアンの名を叫ぶと、
映画はエンドロールで、めでたく幕を閉じたのでした。
「おまえ、大丈夫か?」
「…グスッ、」
周りの親子連れやなんかはほとんど泣いていないのだが、ナナはけっこうな勢いで泣いていた。
「ほら、新しいの使え。」
「うぅぅ……」
薔はやさしく、新しいハンカチをナナに手渡す。
「うぅっ…」
ハンカチで一所懸命に、ナナが涙を拭っていると、
「なぁ、ナナ、」
ハンカチだけでは拭いきれてない涙を、ゆびで拭いながら、
「あんまかわいく泣いてると、ここでおまえを犯るぞ?」
声色はやさしかったが、薔はとんでもないことを言いました。
(ぎゃあ――――――――――――っ!)
「こんなとこで、やめてくださいよぉ!?」
「ここでは犯んねーよ、帰ってなからな、」
「うはぁ!」
結局のところ、これでナナは泣き止んだ。
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