※※第62話:Make Love!(+Cinema).16
日曜日の朝。
「マサ〜!起きてくだサーイ!」
いつまでも寝ているナナ父を、いつまでも居候しているハリーが起こしにやって来た。
「うわぁ!ハリー!朝一に顔見せにくるのは、やめてよ!」
「そんなに喜ばないでくだサーイ!」
なんだかんだですぐ起きた雅之と、大喜びのハリー。
「ハニーに起こしてほしいよ…」
ナナ父がうなだれていると、
「OH〜!マサ〜!そのハニーさんが、今日は天気が良いからマサに洗濯物を干すようにと、言っておりマスヨ〜!」
明るくハリーは、妻からの言伝をした。
「それをはやく言ってよ!」
「HAHAHA〜!」
ナナ宅はここのところ、ハリーのおかげ(せい?)で賑やかすぎた。
ナナと薔は、寝る前にあれやこれやとしたのだけど、早起きして花子のお散歩にふたりして行ったりして、ちゃんと余裕を持って映画館にたどり着くことができた。
「おおおっ!?」
初めての映画館に、ナナは感動ひとしきり。
「タイトルはおまえが言え。」
「お任せください!」
チケット売り場にふたりは並んでいるのだが、なぜ薔はナナにタイトルを言わせたのか?
ようやく順番がきたとき、ナナは緊張しながらもタイトルを述べました。
「ザザえもんを、お願いします…!」
「10時からのザザえもんで、よろしいでしょうか?」
「あぁ。」
受付のお姉さんがにっこり返した後、やりとりは薔へとバトンタッチされた。
…えええ!?
この子が映画ザザえもんを、観るの!?
内面びっくり仰天の、お姉さん。
「二枚な。」
薔はそう言うと、自身のとナナの学生証を差し出した。
「こっ、高校生、二枚、ですね?」
「そうだ。」
お姉さんはいささかふるえる手で、ザザえもんの映画チケットを二枚、発券した。
詳しい説明をちょいとだけされた後、薔はナナの手を引いて立派に歩いていきました。
「これが俗に言う、ギャップ萌え……」
「お姉さん、後つかえてるんだけど!」
ぽわんと見送るお姉さんは、けっこう列ができていることに気づいていなかった。
―――――――――…
「おまえ、なんかほしいモンあるか?」
「えっ?」
ドリンクやなんかの売り場で立ち止まり、そう聞かれ、ナナはうんうんと悩んでいた。
「どれがいいんだか、よくわかりません…」
「仕方ねーな、」
結局、ナナの分も、薔が決めたのでした。
「あれ…?」
愛羅と映画館デートにやって来ていた羚亜が、ふと立ち止まった。
「羚亜くん、どうしたの?」
同じく立ち止まり、愛羅が尋ねると、
「いや、あそこに、薔くんと三咲さんがいるんだけど…」
微かにそちらを指差し、羚亜が明かしたのです。
「え?」
愛羅もそちらを見て、
「ほんとだぁ!」
驚いた様子である。
「二週間も薔さま、行方不明だったんだもん、思いっきりラブラブしてほしいよねっ!」
ホロリとする愛羅の隣、
「うっ、うん…」
その間俺んとこにいたんだよね、とも言えない羚亜は、震えながら頷いた。
「ねぇ、薔さまと三咲さんが何の映画観るのか、調べに行こうよ!」
「ええっ?」
はしゃぐ愛羅は、羚亜の手を取って走り出す。
チケットを切った後、ナナと薔はシネマ1へと入っていった。
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