※※第61話:Make Love(ClimaxU).15






 花子はしばらくすると、気を利かせたのかおねむさんなのか、トコトコとお部屋に向かっていきました。


 「あのぅ……」
 「ん?」

 玄関先で抱き合ったまま、ナナは恐る恐る尋ねてみた。

 「教室には、確かに、薔の血が落ちていたんですが…、お怪我はないんですか?大丈夫ですか?」

 と。




 「あぁ、あれか、」
 少し笑うと、薔はゆっくりとからだを離し、

 「床に残したやつは、俺の血だ。」

 そう言って、片方だけ、シャツを肩から下ろした。



 薔の左肩には、痛々しい傷痕がついていた。




 「―――――――――…!」
 ナナは口元を両手で覆い、悲鳴を堪えるのに必死だ。

 「大した傷じゃねーよ。」
 薔は笑っている。



 「ご、ご自身で…、つけたのですか…?」
 「そうだ。」
 あまりの出来事に、ナナはまたしても泣き出しそうになって、

 「どうしてこんなことを、したんですかっ…!?」

 ついつい、声を少し張り上げてしまった。




 「いいんだよ、」
 薔は目の前で半ばふんぞり返ると、

 「俺の傷はぜんぶ、おまえが消してくれるからな。」

 堂々と、告げたのでした。







 見える傷も、見えない傷も、ひとにはあるわけで、

 「ナナ、」

 瞳を潤ませると、薔は少し身を乗り出した。

 「これ、消すまえに、キスしよ?」





 頬に両手が添えられて、ナナは息をのむ。


 「はぁ…………」
 微かに開かれたくちびるから、零れる吐息が触れ合って、


 チュ―――――――…


 ふたりは何日かぶりに、くちびるを重ねた。




 「ぁ……」
 思わず、どちらからともなく甘い声は漏れて、少しずつキスは深みを帯びてゆく。


 ちゅっ、ちゅ…

 何度も柔らかなくちびるを触れ合わせていると、

 ツ――――…

 微かに伸ばした舌先で薔に上唇を舐められ、ナナはビクッとふるえた。



 「舌…伸ばして………」
 キスをつづけたまま、薔が囁くので、
 「はい………」
 ゆっくりとナナは、従った。


 「は……っ、」
 舌と共に吐息も絡まって、くちびるは濡れてひどく離れにくくなって。



 「ん…………」
 やがてきつく抱きしめ合うと、ディープなキスは深くを刺激した。


 「……ッん…っ、」
 いくらキスをしても足りない、会えない時間は長すぎた。


 それでも、からだじゅうが、熱を帯びてゆく。




 「はあ…ぁっ、」
 火照りまくって一度離れると、唾液が糸を引いていやらしく衣服を濡らしていった。


 「はぁっ、はぁっ、」
 激しく息をつづけながら、つよく抱きしめ合う。




 「ナナ……」
 耳元でそっと、名前を呼ぶと、

 スッ―――――――…

 少し薔は離れて、ナナと見つめ合った。




 「噛まなくていい……」
 微笑み、投げ掛けられたその言葉が、誘うようにナナを引き寄せた。

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