※※第61話:Make Love(ClimaxU).15







 ヴァンパイアの皆さんが、なんだか意味不明なことを言いながら帰っていったから、真夜中の教室にふたりっきりになったんだけど、そのまま手を繋いで帰ってきたんだよね……

 なんだかもう、嬉しすぎて、自分でもどうしたらいいのか…







 バタン――――――――…

 玄関のドアを閉めた途端、

 「ワンッ!」

 それはもう大喜びの花子が、ご主人さまに飛びついた。


 「ただいま、花子。」
 笑っている薔の頬を、花子が一所懸命に舐めている。




 「あの……」
 ナナはおもむろに、口を開いた。

 「どちらに、行ってらしたんですか?」






 「あぁ、眼鏡んとこにいた。」

 すると薔は花子をなでなでしながら、驚くべき事実を話し始めたのだ。


 「え?醐留権先生のところに、ですか?」
 「そうだ。」

 …………えええええ!?


 ナナがぶるぶるとふるえていると、

 「俺がおまえのそばにいてやれねぇ間、あいつにもおまえのことを頼んだ。したらあいつ、引き受ける代わりに家へ来い、つったんだ。」

 薔はちょっと笑って、告白をつづけたのでした。



 「身を潜める場所なん、そこら中にある。あいつ、そういうのわかってて、わざと交換条件にしたんだろうな。」
 穏やかに話す薔のまえ、じつはこんなに近くにいなたんて、ナナはなんだか悔しくて仕方がない。


 でも…、


 「だから、あいつから、おまえのこと、いつも聞いてた…」


 くるしげに告げると、薔は花子を抱きしめ顔をうずめてしまったのだ。



 薄暗い玄関、上がり口に座り込んで、会えない間にやっぱり痩せたそのからだは、微かにふるえていた。




 「ごめん………」





 少しでも、悔しく思ったことが、晴れていった。








 そうっと、ナナが薔の肩へと、手を置くと、

 花子も一緒になって、ぬくもりは伝わってきた。




 やがて花子がふわりと、ご主人さまの腕をすり抜けていったため、

 ぎゅっ

 その場所で、ナナは薔を抱きしめていたんです。






 「ナナ………」
 微かな声で、薔は名前を呼んで。


 花子が見守るなか、悲しみはそっと、愛おしさが包んでいった。

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