※第57話:Love(+Sweet!).41
「桜葉、私たちは、ドライブでもしようか、」
「いいのぉぉ?」
こけしちゃんの肩を抱いて、醐留権は歩き出した。
「もちろんだとも。じつは今夜まで、バイクをレンタルしてあってね。」
「やったぁぁっ。」
はしゃぐこけしちゃんと、歩いてゆく醐留権は、
ぺこり
見送っている夕月に、きちんと会釈をしたのでした。
「なぁに、こないだの借りを、返したまでさ。」
夕月は穏やかに、そう呟いた。
「なんかすげぇ、うまくいったな、」
「そうですねっ。」
カーテンの向こう、ナナのあたまを薔が撫でているのだが、なんとあと10分ほどで、披露宴は始まってしまうのである。
「なんか、あのカーテンの向こう、微かに揺れてないか?」
何人かがそこに気づき、目を凝らした瞬間だった。
〜♪〜♪
最大音量で、ナナさんの携帯が着信を告げたのである。
……えええ!?
皆さんがびっくり仰天のなか、
「もしもし?お母さん!?」
電話に出ちゃった声が、聞こえてきたんですな。
「えっ?うん、うん、」
会場は静まり返っている。
「えええっ!?」
……びくびくぅ!
会場が震撼したところで、
「うん、わかった、じゃあ明日ね!」
どうやら、電話は終了した様子である。
その直後、
「あー、ったく、狭ぇな此処、」
シャッ――――――――…
…びくびくぅ!
カーテンが勢いよくスライドされ、とあるカップルが登場してまいりました。
「おまえは耳元で、やたらでけぇ声出すな、囁け。」
「囁く!?」
周りをいっさい気にしていないナナと薔は、
「どっか寄ってくか?」
「ええっ!?いいんですか!?」
バタン―――――――…
手を繋ぎ、披露宴会場のド真ん中を歩いて出ていきましたとさ。
気づいた者はおそらくいなかったが、途中、薔と夕月はやさしい視線を交わしていた。
「ねぇっ?二木くん、イケメンだったでしょ?イ・ケ・メ・ン☆」
「たっ、確かに…!」
会長はぽわんと見送り、二木は息を呑んでおった。
『それでは、新郎新婦、ご入場です。』
そして披露宴が始まると、泣きじゃくる梨果子と、なかなかイケメンの春希が、ご入場したのでした。
「うぅぅ…っ、夕月さん、ほんとに…ありがとうございますっ…!」
泣いている梨果子に、
「披露宴だけでなく、式にも出席していただきたかったね。」
春希が優しくこう言ったので、どうやらふたりはすでに、結婚式のほうは済ませた様子である。
「あたしねっ、いかにもデキそうなひとは、ダメなのっ!春希みたいに、見た目デキそうでもてんでダメなひとじゃないと、ダメなのっ!」
「はいはい、確かにおれは、梨果子がいないと何にも出来ないよ?」
ゆっくりと、前に向かって歩く、号泣の梨果子と微笑む春希に、
「おふたりさん、会話、ぜんぶ聞こえてるぜ?」
席に着いて拍手を送る夕月は、とても嬉しそうに笑っていた。
「梨果子ったら、彼氏がいるなら言えばよかったのにぃ。」
「だなぁ。」
勝手に結婚させようとしちゃった、梨果子の両親は、面食らっておるが大感動している。
「春希ぃ、良かったねぇ。」
婚姻届の届け出に送り迎えを買って出た春希ズご両親も、大感動のあまりしゃくり上げておった。
…――病めるときも、健やかなるときも、
誓えます、
病めるときには、健やかなるときの喜びを、
健やかなるときにも、病めるときの苦しみを、
共に分かち合い、共に生きてゆくことを。
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