※第57話:Love(+Sweet!).41







 ご丁寧にもナナは、夕月を寝室へと案内していた。


 「薔っ、起きてくださいよぉ、」
 そして、彼を揺さぶってでも起こそうと意気込んだのであるが、

 「まぁまぁ、ナナちゃん、ちょっと待ってろ。」

 やけにご機嫌な夕月は、胸ポケットからデジカメを取り出し、


 ピロン


 ベッドのうえにて静かに眠っている薔を、カメラに収めたのである。
 花子はつぶらな瞳で夕月を見上げ、ずっと尻尾を振っている。



 ナナはポカンとしているが、

 「ほら、ナナちゃん、よく撮れたぜ?」

 こっそり夕月は、電子式ファインダーで確認させてくれた。





 夕月のデジカメを手にしたナナは、うっとり。

 「かっ…、かわいいぃ……っ!」






 「いや、でもこちら、かっこいいですね…!でもキレイですねぇ…、あっ、でも色っぽくて、ほんと困っちゃいます…!かわいいぃ…!」
 ナナの周りには、ハートが飛んでいそうな勢いで、夕月は笑いを堪えている。


 「せっかくだ、今日中に現像してナナちゃんにあげよう。」
 くっくっと笑いながら、夕月がこんなことを言うので、
 「うわぁ!夕月さんて、ほんとうに神様ですね!」
 ウルウルとナナは、拝み始めた。




 テンション急上昇のナナの声により、

 「…るせぇな………」

 薔が、目を覚ました。




 「朝からなに叫んでんだ?おまえは、」
 そんでもって起き上がった彼は、黒髪が乱れ甘い声で、ちょっと不機嫌そうであった。



 「かわいい――――――――――っ!」
 「おい、なんで夕月さんがいんだ?」




 毛布を頭までかぶり、どのタイミングで起きるべきかを、終始、羚亜は思案していた。










 というわけで、本格的に起きまして、リビングにみんなしております。

 寝不足の羚亜は、ブスッとしている。


 「線の細ぇ美少年だなぁ。」
 ところが、夕月がそんなことを言いながら笑っているので、

 …かあぁぁあっ!

 真っ赤になった羚亜は、俯いた。



 そんななか、

 「ちょうど良かった、花子ちゃんとこの子に、留守を頼んどくか、」

 非常に楽しそうに笑い、夕月は言ったのでした。

 「薔とナナちゃんには、これから俺の悪巧みに、付き合ってもらうからよぉ。」

 とね。




 「おおお…っ!?」
 「悪巧み?」

 ふたりして、雰囲気のまったく違う反応を示す。

 「普段着でいいんだが、とにかく支度してくれな?」
 笑いつづける夕月に促され、ナナと薔は簡単な支度に取りかかった。


 くっくっと笑う優雅な夕月を、ソファに腰掛けた羚亜がポカンと見上げていた。

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