愛するしか出来ない。
そして、一日だけ学校を休んだ咲が、多少の不安を抱えつつも漣の愛があれば怖くないと、思い切って登校をした日のこと。
「藤堂先生は急遽転勤になってな、今日からは新しく、柏葉 結華(ゆいか)先生がこのクラスを受け持つこととなった。」
咲たちの担任は、柏葉になった。
「皆さま、何卒よろしくお願い申し上げます。柏葉先生と呼んでくださいまし。」
柏葉は眼鏡を、くいくいさせている。
「藤堂ってさ、体罰問題とか起こしたし、ほんとはクビになったんじゃね?」
生徒たちはこそこそと、なにげに喜んでいる。
(漣って、なんだかんだで、やることすげえな、)
咲は呆れつつも、感心していた。
――――――――…
「柏葉先生って、お若いですねぇ。」
職員室にて、明らかにデレッとした男性教師が柏葉へと声を掛けた。
「褒め言葉と、受け取っておきましょう。」
眼鏡をくいっとさせた、柏葉に、
「彼氏とかは、いらっしゃるんですか?」
男性教師は、尋ねました。
「彼氏は要りませんが、永遠に片想いの大切なおかたはいらっしゃいます。」
きっぱりと答えた柏葉の、威圧感や力強さによって、
「あ、あぁ、そうなんですかぁ…」
たじろいだ男性教師は、後ずさり去っていった。
「ふぅ…」
机に頬杖をつき、
「ほんとうに、どこまでお優しいおかたなんでしょう。」
柏葉は呟いた。
「ですから、わたくしはこの片想いを、止める気はさらさらございませんことよ?」
「くしゅんっ、」
またしても漣はつづくくしゃみに、
「僕、風邪ひいたのかな?咲は大丈夫かな?」
そんなことを独りごちて、ソワソワしつつも書類に目を落とした。
「あ、また、逆さまだった。」
『愛するしか出来ない。
…――愛してるよ。』
…――つまさき重ねて、苦しみを分かち合おうか。
したまで絡めて、
深く堕ちる、
…―――区無き楽園――――…
『I'm not alive if you are not.』
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