愛するしか出来ない。







 「ねぇ、いくらなんでも、咲、遅すぎるよ!」
 先ほどから青ざめている漣は、上着を持って外へ飛び出そうとした。

 「漣さま、落ち着いてくださいませ!咲さまがお帰りになられたときに、すれ違ってはいけません!ここはわたくしが、学校まで探しに行って参ります!」
 懸命に言い聞かせ、柏葉が代わりに飛び出していった。



 「咲っ……、」
 震えながら漣は、こらえようとする涙が止まらずにいた。











 ―――――――…

 「そのからだとその顔で、よく恋人なんて出来たよなぁ。誘ってるとしか思えないだろ、フツー。」
 笑いながら藤堂は、下を履いていた。

 制服は乱れ、汚れて、下半身にほとんど何も纏っていない咲は、床に座り込み黙って俯いている。



 「どうせからだが目当てだろ?こんな淫乱、いつも不安でしょうがないもんなぁ。」
 すべて、何事もなかったかのように着込んで、

 「明日はホテルにでも行こうな。」

 ピシャッ――――…

 藤堂は、教室を出ていった。








 「………………、」
 しばらく、咲は放心状態だったが、

 「痛っ……っ、」

 顔をしかめると、おもむろに顔を上げた。




 「は……」
 途切れてしまいそうに浅く、短い息をしている咲の顔は、血の気がまったく無く、蒼白い。


 「こんなとこまで…、かけられちまったな……」
 ぽつりと、言って、

 「なんかで…拭かねぇと……、漣が心配する……」

 フラフラと咲は、机に手を当て、立ち上がった。

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