闇より深い、愛で。







 キィ―――――…

 コートを着込ませた咲を抱きかかえ、漣は部屋を出た。


 「こんなに軽くて…、なんだか苦しいよ、咲…」
 未だ漣は、涙を流している。




 そこへ、

 「漣さま、お車の手配はできております。」

 柏葉が顔を出し、謹み告げた。


 「あれ?柏葉、さっきのヤツらは?」
 「あれらは、警察の方々がひっ捕らえて行かれました。」
 やはり眼鏡をくいっとさせて、報告した柏葉は、

 「それより、漣さま、大変でございます。」

 かしこまり、更なる報告をしたのだった。


 「漣さまが抱えてらっしゃるそのおかた、咲さまは、プロフィールでは23歳となっておりましたが、実際のところは、今現在、17歳でいらっしゃいます。」


 と。




 「えええ!?」

 漣の驚きようは、凄まじかった。

 「わたくし、きちんとお調べいたしました。咲さまは、まだ、れっきとした未成年でございますゆえ。」
 柏葉はくいくいと眼鏡を上下させているので、どうやら癖のようである。


 「そんな…!ますます、頭にきちゃったよ!」
 漣は、怒髪冠を衝くといった勢いだが、
 「落ち着いてくださいませ。わたくしも頭にきてはおります。しかし後は、法があやつらをきちんと裁いて下さいます。」
 穏やかを保つような声で、柏葉は言い聞かせた。




 「そうだね、ありがと、柏葉。」
 「そのお言葉と笑顔、ありがたく頂戴いたします。では、あちらで、わたくしの愛車がお待ちしておりますので。」

 落ち着いてきた心持ちで、向かった先には、


 立派なランボルギーニが、停まっていたのでした。
















 ―――――――…

 「ん……………」
 咲は、目を覚ました。

 おぼろげな瞳に映るのは、見たこともない、広い部屋。
 そして、とても柔らかなベッドに、咲は寝かせられている。



 すると、

 「咲っ…!」

 すぐ隣で、漣のふるえる声が聞こえたのだ。



 ゆっくり顔を向けてゆくと、やっぱり漣は今にも泣きそうな表情で、

 「漣…、ここは何処だ?」

 微かな声で、咲は問いかけた。



 「ここは、僕の部屋だよ。」
 やさしく明かした漣だったが、
 「また随分と、立派な部屋だな…」
 咲のこの言葉に、

 グッ…

 拳を固めると、ついに明かしたのでした。


 「咲、どうしても、聞いてほしい話があるんだ。」

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