教えて、愛を。





 「泣くな。」
 「だっ、て………」
 咲は、胸の締め付けに戸惑いもしたが、彼のしたで青年は泣きじゃくる。

 「男が、カンタンに泣くんじゃねぇよ。」
 傍らのシーツを掴んで、覗き込んだ咲だが、

 「簡単、じゃない…」

 青年は泣きながら言った。



 「あなたに会えてから、よく、泣いた、想うとただ、泣けた……、会いたくて、仕方なかった………」





 「なぜだ?」
 咲は思わず、掴んでいたシーツを引っ張った。


 「だから…、好き、なんです…………、」


 そして、肩をふるわす青年に、



 「わかんねぇよ!」



 鋭く、叫んだ。




 「え…………?」
 涙に濡れた顔を、あらわにさせた青年の、

 グリッ

 股間を咲は、つよく掴む。


 「ひゃあぁ…っ……………!」
 青年はビクンとのけぞり、きつく瞳を閉じた。

 「や…っ…………痛い………………」
 身悶える彼のアソコを、ジーンズ越しにグリグリと捻り、
 「好きってなんだ?ココをこんなにして、なに綺麗事言ってんだ?」
 咲は低く、詰問する。


 「痛っ……………」
 青年は、端整な顔をひどく歪ませて悶えつづける。

 「おまえだって、ほしいのは、からだだけだ。ほかはなんも、俺にはねぇんだよ。」
 吐き出すように、言い放った咲のした、


 「ちがう、よ…………?」


 激痛のなか、青年はうっすらと瞳を開けた。



 「あのとき、の、あなたは……、とってもやさしくて、かなしい、瞳を、して、いたよ………?」




 「は?」
 手を緩めた咲に、そっと手を伸ばした青年は、なめらかに頬へと触れた。


 「からだじゃ、ないの、僕は、あなたが、好きなの…………、」

 そして、泣きながら微笑む。


 「好きって、わからないなら、教えて、あげる………、」



 ゆびさきが優しすぎるほどに、頬を撫でた。







 咲はただ、黙っている。


 青年は、つづける。

 「綺麗事じゃ、ないの……、僕、あなたに、会えてから、あなたのこと、考えて、ひとりで、シたの…………、」

 この告白は、咲をドキッとさせるにはじゅうぶんだった。


 「でも、矛盾じゃ、ないの、好きだから、ずっと、忘れなかったの………、思い出す、たびに、会いたくって、仕方なかった、」

 青年の瞳から、再び涙があふれだす。



 「会いたかったよぉ………!」



 せつなさに満ちた表情で、


 「うわぁーん!」



 青年は、咲にひしとしがみついたのだった。

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