教えて、愛を。






 それから、ときは揺蕩い流れて。

 季節は、夏の終わりを告げようとしていた。




 咲はなにも変わることなく、ただベッドのうえで、あしを開く毎日だった。





 しかし、変わったことが、あるとするなら。



 「ん……………」
 彼はよく、客人の合間に、抜くようになった。


 「はあっ…………はぁ…っ………………」
 ベッドでひとりで扱く咲は、髪を振り乱して、あの青年のことを思い出している。


 咥えたゆびさきが、せつなげな瞳と微かに開かれたくちびるが、からだの局所を締め付けて止まない。


 「あぁ………っ……………」
 からだを反らして、あしを曲げて悶える咲は、生まれてはじめてひとりで抜く行為に溺れた。







 またつぎも、興味のない客人との愛のないセックス。

 なにも考えることなく、ベッドのうえで煙草を吸っていた咲のもとへ、



 コンコン、



 つぎの客が、やって来た。




 「入れ。」


 煙草を咥えたまま、返事をする。





 キィ―――――…



 扉を恐る恐る開けて、姿を現したそのひとは、




 「なんで、おまえがいんだ?」





 あのときの、青年だった。










 「あ、あの、」

 青年はゆっくりと扉を閉めたが、部屋の入り口でもじもじしながら立っている。
 彼はTシャツにジーンズという、ラフな格好で見間違うほどだった。


 「どーしてココが、わかった?」


 問い詰める咲に、


 「ネットで、見つけた、んです。こちらの、サイト、其処に、あなたが、映って、た」

 俯いたまま、青年は消え入りそうに答える。



 「ふーん、」
 咲は、煙草を灰皿に押しつけた。


 「なんでわざわざ、こんなトコ来たんだ?」
 そして彼は、声をきつくする。


 ビクッとした青年は、顔をあげた。
 その頬はあかく染まり、瞳はうるんで咲を見つめた。



 「会いたかった、んです…、お礼が、言いたかった、どうしても、」



 泣きそうな表情で、青年はくるしげに言葉にした。




 「それだけのために、高い金払ったのか?」
 咲は呆れて言ってみたが、
 「それだけ、じゃ、ない、」


 青年は、自身の肩を抱いて、俯いたが力強く告げた。




 「好きになって…しまったんです、あなたの、ことが、」

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