教えて、愛を。
それから、ときは揺蕩い流れて。
季節は、夏の終わりを告げようとしていた。
咲はなにも変わることなく、ただベッドのうえで、あしを開く毎日だった。
しかし、変わったことが、あるとするなら。
「ん……………」
彼はよく、客人の合間に、抜くようになった。
「はあっ…………はぁ…っ………………」
ベッドでひとりで扱く咲は、髪を振り乱して、あの青年のことを思い出している。
咥えたゆびさきが、せつなげな瞳と微かに開かれたくちびるが、からだの局所を締め付けて止まない。
「あぁ………っ……………」
からだを反らして、あしを曲げて悶える咲は、生まれてはじめてひとりで抜く行為に溺れた。
またつぎも、興味のない客人との愛のないセックス。
なにも考えることなく、ベッドのうえで煙草を吸っていた咲のもとへ、
コンコン、
つぎの客が、やって来た。
「入れ。」
煙草を咥えたまま、返事をする。
キィ―――――…
扉を恐る恐る開けて、姿を現したそのひとは、
「なんで、おまえがいんだ?」
あのときの、青年だった。
「あ、あの、」
青年はゆっくりと扉を閉めたが、部屋の入り口でもじもじしながら立っている。
彼はTシャツにジーンズという、ラフな格好で見間違うほどだった。
「どーしてココが、わかった?」
問い詰める咲に、
「ネットで、見つけた、んです。こちらの、サイト、其処に、あなたが、映って、た」
俯いたまま、青年は消え入りそうに答える。
「ふーん、」
咲は、煙草を灰皿に押しつけた。
「なんでわざわざ、こんなトコ来たんだ?」
そして彼は、声をきつくする。
ビクッとした青年は、顔をあげた。
その頬はあかく染まり、瞳はうるんで咲を見つめた。
「会いたかった、んです…、お礼が、言いたかった、どうしても、」
泣きそうな表情で、青年はくるしげに言葉にした。
「それだけのために、高い金払ったのか?」
咲は呆れて言ってみたが、
「それだけ、じゃ、ない、」
青年は、自身の肩を抱いて、俯いたが力強く告げた。
「好きになって…しまったんです、あなたの、ことが、」
[ 12/69 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧へ戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る