Affair.1『女王誕生?』







 ………………いつも?

 次第に息苦しくなってきた夏は、目が点。
 そのまま微動だにできなくなる。

 「あ…っ、こら……」
 「先生シャンプー変えたの?」

 ……ちゅっ…ちゅ…

 おまけに、布団に潜り込んでいれども、聞こえてきてしまった。
 奈美ちゃん先生の甘い声と、リップ音が。


 (ええ!?なにこのティーンズラブ展開!)
 夏は度肝を抜かれた。
 少しは気を遣ってほしい、ここはカーテンが引かれているのだから。


 「ん…っ、ダメっ……」

 ところが、ふたりはだんだんと盛り上がってゆく模様だ。




 (あんの、蕪木めぇえ…!じつはチャラ男だったのか…!あたしはまんまと騙されたぞ!)
 ここで夏には止め処ない、怒りが込み上げてきた。

 (あたしが陰から見守ろうとした奈美ちゃん先生を、汚しやがってぇえ…!)

 布団が全体的に熱くなる。
 夏の怒りは、つい先ほど芽生えた奈美ちゃん先生への好意からきているもののようだ。






 がばっ!

 怒りによって突き動かされる体は、体力テストでその力をほんの少しでもなぜ発揮できなかったのかと思われるほどの力強さで起き上がった。

 そして、

 シャアッ――――…!

 そのまま勢いに任せて、カーテンをまるで自動のように開けると、夏はわざとらしく音を立てて上履きを履いた。


 いわゆる対面座位で取り込み中だった蕪木先輩と奈美ちゃん先生は、唖然。



 そして、夏が堂々と保健室を出ていこうとすると、

 「休んでなくていいの?」

 なんと、蕪木先輩が声を掛けてきてくれたのだ。



 初恋のひとに声を掛けられ、乙女なら少しくらいはときめくだろうが、

 くるりと振り向いた夏は、いちおう先輩に向かって怒りの叫びをぶちまけた。

 「休んでられるか!ボケェェェエエエ!」











 ピシャッ――――…!

 夏は素早くドアを閉め、保健室を後にした。


 我に返った奈美ちゃん先生が、青ざめ慌て始めるなか、

 「かっ……」

 奈美ちゃん先生に乗ったまんま、保健室の入り口を見つめ蕪木は瞳を輝かせた。

 「かっこいい…!」

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