Affair.6『堂々姦淫?』








 そして、傷心の夏は次の日も勇気を出して登校してから、傷心とか言っている場合でもなくなった。



 (う、上履きがない…!)
 登校して早々に、いじめが開始されていたのだ。
 出だしがベタすぎて、嫌でもいじめと気づいてしまった。
 上履きを作ってくれた業者さんに謝ってほしいものである、あと地球にも、資源というものは無限にあるわけではないのだから。

 (ということは、教室に行けない!)
 靴下で教室に行くのもはばかられるなと気づいた夏は、このまま授業をサボってしまおうと思いついた。
 今日はめちゃくちゃ疲れていることもあり、やはり最初から休んでおけば良かった。


 などと考えながら、下駄箱のところで冷や汗をかいていると、

 「あれぇ?日向夏さんじゃん、おはよ」

 今までに聞いたことのない声を掛けられた。
 ということは、先輩である可能性が高い。

 「どうしたの?教室行かないの?」
 しかも聞いたことのない声は、左や右からもいくつも近寄ってきた。
 青ざめた夏は顔を上げることができずにいる。

 「何ならあたしたちが連れてってあげようか?」
 笑った女子生徒は後ろから夏のバッグを奪い取り、左手にいた生徒に投げて渡した。
 「あ、あの……返してください……」
 夏はか細い声で訴えたが、先輩女子たちの笑い声に掻き消された。
 教師は誰も通りかからず、注意してくれる人は周りに誰もいない。

 「あんたマジで藤堂くんと付き合ってんの?」
 「信じらんな〜い!地味でブスのくせに!」
 女子たちは夏のバッグを放り投げ、代わる代わるに持つとずさんに扱った。
 中にはお弁当も入っているのに、どうなってしまっているのかわからない。


 おろおろしているばかりの夏の髪を、最初にバッグを奪い上げた女子が掴もうと手を伸ばした。





 そのとき、

 「ねぇねぇ、何やってんの〜?」

 場にはあまりにも不釣り合いな、癒し系の声が響き渡った。

 ビクッ!となった夏はなぜ“彼の声”が聞こえてきたのか意味がわからず、余計に縮こまる。




 「うっわ、なんだ、奏多かあ……びっくりさせないでよ」
 一瞬張りつめた空気はたちまち緩んだ。
 夏だけは泣きながら、怯えまくっている。

 女子たちは、アホの奏多にはいじめというものがそもそも理解できないだろうと高を括っていた。

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