Affair.6『堂々姦淫?』







 親友に誘われて、結局3Pに加担してしまった藤堂はいたたまれなくなった。
 「ありがとうございました」を告げて帰っていった夏は、無闇にテンションを大袈裟にしているように見えた。
 わざわざお礼を言われるようなことは、一つもしていないと藤堂はわかっていた。

 「……日向さんが挙動不審だったのは、奏多のせいだったのか……」
 苦笑いを浮かべた藤堂は、彼女とは反対の帰路に就く。
 家まで送り届けてあげたかったが、今の藤堂にはできなかった。
 人目を気にしているからではなく、彼女の心情を気にすればこそ、そっとしておいてあげるしかなかった。












 「また中に出されそうだったんだけど……あの変態野郎……」
 遠回りな道を選んだせいでいっそ野宿でもしてしまおうかと考えていた夏は、ぶつくさと独りごちながらとぼとぼと歩いていた。

 「奈美ちゃん先生と付き合ってるくせに、最低だし、最悪……」
 語彙力がさほどないなりに、悪態をつく。
 そうしながらも根強く、奏多の感覚は残りつづけていた。

 最初から、恋人同士ではなかった、弄ばれる女王様と下僕とは名ばかりの君主という関係性だった。
 夏はこんなこと微塵も望んでいない、奏多への初恋もとっくに砕け散ったはずだ。
 今しがたもこてんぱんに踏みにじられたばかりだ。


 「蕪木先輩のアホ……」
 泣きながら呟いた夏は、胸が痛くて息をするのが少し困難だった。
 奏多はビンタを食らったことにも興奮真っ只中とは知らずに、これでもうさんざんな目に遭わされる日々から解放されると信じて、夏は俯き帰っていった。

 信じるほどに、不安になった、もっと泣きたくなった。


 夏は藤堂と恋人同士の学園生活を送り、奏多は奈美ちゃん先生と今まで通り付き合う。
 明日からのその日々を思うと憂鬱でたまらなかった。

 奏多は、きっと何も気にしないのだろう、反省もしなければ学習することもないだろうし後悔だってしないだろう、天性のアホなのだから。
 何事もなかったかのように、奈美ちゃん先生とうまくやっていくのだろう……と思うと腹が立ってくるのは無論「奈美ちゃん先生を心配してのことだ」と懸命に思い込もうと努めている。

 夏は、心行くまで奏多に往復ビンタを食らわせてくれば良かったと、後悔していた。
 自分の後悔はそこにあるのだと、必死になって言い聞かせていた。

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