Affair.6『堂々姦淫?』








 部屋を出ていく際、夏は腹の虫がおさまらずちゃっかり捨て台詞を残していった。

 「ドMの奈美ちゃん先生とどうぞお幸せに!このドアホが!」

 決して、奈美ちゃん先生に対してやきもちを妬いているわけではない。
 純粋に祝福の気持ちを送っただけだ、と、思いたくて仕方がなかった。




 藤堂は帰り際、先ほどの言い争いがまるでなかったかのように奏多のことを心配している様子だったが、夏は彼氏がいてくれないと玄関まで辿り着けないのでぐいぐいと腕を引いて共に部屋を後にした。
 閉まったドアのほうを、奏多は一瞥すらせずにいた。

 「……っ」
 肩をふるわせた彼は、ベッドのうえでうずくまる。
 女王様にあれだけ叱られて、反省でもしているのか凹んでいるのかと思いきや。



 「うっわあ……痺れた…!」
 ただ興奮しているだけだった。
 これっぽっちもめげていなかった。

 「語彙力はあんま無えけどけっこう罵ってくれたし、俺の女王様ったら最高」
 一部褒めていないような気もするが、興奮冷めやらぬ奏多は不発のまま抜かれてしまった自らを手で扱きだす。

 「ひっ叩かれんのもくせになっちゃいそう……」
 妖しく笑いながら、彼は一人で盛り上がっていった。

 「は…っ、あ……っ」
 できることなら恥ずかしがる女王様に見ていて欲しかったが、生憎彼氏に奪われてしまった。
 奏多はこのとき、今までに感じたことのない複雑な気持ちを抱いていた。
 心臓のあたりが、ちょっとズキズキする気持ち。

 それが何なのかは、アホなのでまだわからなかった。















 「無事に外に出られましたね!」
 今まで一度も奏多から逃げられたことがない夏は彼氏のおかげで初の逃亡に成功し、門を出てからしばらく歩くと感嘆の声を上げた。
 「あ、うん、そうだね」
 ぎこちなく微笑んだ藤堂は、彼女と手を繋ごうとして躊躇っている。

 「あの、日向さん、良かったらこのあと俺ん家……」
 「あーっ!こんなとこ学校の誰かに見られたらやばい!殺される!」
 何気に藤堂も全然足りていなかったため、自宅に誘おうとした言葉を青ざめた夏は聞いていなかった。
 藤堂と付き合っていることがばれて、帰り際ですらものすごい殺気に攻撃されていたのだ。
 ふたりで歩いている光景を目撃されたものなら、ますます自分の命が危うくなる気がした。

 「では、藤堂先輩!今日はありがとうございました!」
 ぺこりと頭を下げた夏は慌てて、だいぶ遠回りになるのだけど彼氏とは反対方向へ歩き出した。

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