魅惑と誘惑の蜜








 (い、言えない…、けど、言いたい…)

 手に汗握る羚亜は、ちょっと俯きがちだ。


 (こんなこと言ったら愛羅さん、何て思うか…)
 「どうしたの?羚亜くん、」

 ………………ドキッ!




 彼女に心配そうな声を掛けられ、顔を上げた羚亜の頬は、赤くて、

 「あ、愛羅さんっ、あの、俺、」
 「やだあ、羚亜くん可愛い〜!」

 愛羅はうっとりんこなんだけど、勢いまかせに羚亜はけっこう大声で言ったのでした。

 「たまには愛羅さんを、ドSに責めてみたいんだ!」












 …羚亜くんがドS――――――――――っっ!?


 教室はさりげなく、震撼した。






 「うそぉ…、かっこいい…」
 愛羅は瞳を、キラキラさせている。

 「でも俺、ドSとかよくわからないから、」
 勢いにまかせたまま、羚亜はつづけると、

 がしっ!

 後ろの席の薔の両手を、両手で掴んで言いました。

 「薔くん!教えて!」











 「だれが掴んでいいと言った?」
 「あっ、ごめんね、」

 ぱっ

 すぐに手を離す、羚亜。




 そんでもって、

 「おい、ナナ、」
 「はいぃ…」

 前の有り様を見ながら感動していた彼女に、薔は堂々と声を掛けたのでした。

 「俺たちもどっかで盛り上がるか、」
 「ほげえ!?」









 真っ赤で慌てるナナの手を強引に引き、薔は教室を出ていっちゃいましたので、

 「あの〜、薔くん、俺のお願いは?」

 羚亜は唖然と、手を伸ばした。





 「羚亜くん、つまりはああいうのだよ!」
 「愛羅さん!俺もうますますわからなくなっちゃった!」




 ……羚亜よ、ここは素直に、

 彼女に聞いとき!

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