魅惑と誘惑の蜜








 (桜葉の意見を、伺おうか…)

 1-5の教室へと向かいながら、醐留権はムンムンとしておりました。

 (いやしかし、いきなり聞いて引かれては困るな…)


 …………そんなに思い詰めて、いったいゾーラ先生は何を彼女に聞きたいんだい?








 (ここは、やむを得ない。)

 ガラッ――――…

 辿り着いた教室で、思いきってギャラリーを振り切りドアを開けると、

 「暮中、ちょっといいかい?」

 醐留権はなぜか、薔を呼び止めた。





 「…よくねぇな。」
 ナナにちょっかいを出していた薔が、そら険しい雰囲気で返す。

 「そう言わずに、付き合ってくれ。相談があるのだよ、」
 「ぜってーに嫌だ。」
 「少しくらいいいじゃないか!」





 とまあこんな風に、ふたりの美形男子が揉めてるわけなんですが、

 (こっ、こけしちゃん!?こけしちゃんがっ…!)

 ナナは親友のことが、めっちゃ気になっていた。









 ……付き合ってくれ…付き合ってくれ…(※エンドレスリピート)


 (あぁぁぁ、とうとうぅぅぅ…)

 相談があるのだよ、の部分をいっさい聞いていなかったこけしちゃんは、楽園まであともう少し。





 「こうなったら三咲に頼もう!少しだけ暮中を貸してくれ!」
 「それより醐留権先生、こけしちゃんが…」
 「なに!?」

 …ついに、楽園が見えちゃったようです。









 「さ、桜葉、大丈夫かい!?」
 「あぁぁぁ、ゾーラ先生ぇぇ…、あたしにはぁぁ、お構いなくぅぅ…」
 「できるわけないだろう!」

 と言いますことで、醐留権は責任持って彼女を、保健室へと運んでいったのでした。





 「………………。」

 周りは、ポカーン。






 「よくやったな、おまえ、」
 「えっ?エヘヘ、そんなっ、」
 ナナと薔は構わず、イチャつき始めた。












 「桜葉、しっかりするんだ!」
 「こればっかりはぁぁ、ムリぃぃぃ…」
 「桜葉!?」
 うっとりぐったりのこけしちゃんを、保健室へと運ぶ途中、

 (これは、様子を見たほうがいいな…)

 醐留権は真剣な表情で、こころにてそれを呟いたのだった。

 (こんな状態の桜葉に、大人の玩具はまだ使えないだろう…)











 …――――それいっそ、本人にちゃんと聞こうよ!

[ 63/222 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]



戻る