恋して愛してバレンタイン








 「雅之、おかえりなさい。残業お疲れさま。」
 帰宅したナナ父に、ココアサブレをサクサクかじるナナ母が、労いの言葉を掛けた。


 「ハニーぃ、ただいまぁ!疲れもぶっ飛んだよ!」
 大喜びのナナ父は、すぐさま元気になる。



 そして、

 「今日はそんな雅之に、ご褒美があるのよ。」
 「え?」
 ナナ母は力強く、微笑みますと、

 「はい、いつもありがとう。」

 平べったくてやけに大きな、赤い箱を夫へ差し出したのだった。





 「さすがはマイハニーぃ!こちらこそいつもありがとう!」
 「どういたしまして。」

 感涙にむせるナナ父は、バレンタインのことを存じ上げていない。

















 ――――――――…

 「すげえな、おまえがこれ作ったんだな、」
 「えっ、えへへっ、」

 リビングにて、抜いたあとはさっそく、チョコレートといきますか!


 「花子のは、尻尾か、」
 「よくおわかりに!…じゃなくて、えっと、そうだと思います!」
 ナナは慌て、薔はクスッと笑うと、

 花子のほうはだいぶ大きな尻尾なので、ナナの作った例のやつを、まずは一口。







 「ど、どうですか…!?」
 ナナの緊張は、ひとしきり。

 彼は一口を、時間を掛けて味わうと、

 「……美味ぇな、」

 と、呟いた。





 「ほんとですかぁ!?」
 「あぁ、こんな美味ぇチョコは初めて食ったぞ?しかもおまえこれ、薔薇だろ?」



 ……よくわかったな、君!








 「あああ、なんかわたしももう、嬉しすぎてお腹空いちゃいました…」
 「食うなよ?」

 ………………え?


 「でもこれ、わたしが作ったんですけど、」
 「おまえは俺のために作ったんだろ?誰にもやんねぇぞ、」

 …………ぇぇえ?


 「でもこれ、わたしが作ったんですけど!」
 「うるせぇな、全部俺が食うに決まってんだろ?」

 ……ぇぇぇぇえええ!?

 嬉しい!








 そのあとはちゃんと、薔が夕食を作って、みんな揃ってのディナータイムと相成ったのでした。


 でもね!

 彼はなにげに、めっちゃ大事そうにチョコ食べてたから、

 ナナさん、これからはお料理にも、

 励んでおくれ!














 愛は永久に未開拓?

 だから何事もふたりで、切り開けばおもしろい。















 …――Happy Valentine for you!!

[ 59/222 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]



戻る