淫らな悪戯を召し上がれ








 『すごいですよ、薔っ!わたし浮いちゃうんですよ!?』
 帰り道、魂のほうのナナはいつも通り彼とイチャつきながら帰っていた。

 「おまえ、はしゃぎ過ぎじゃねぇか?」
 『だってなんだか、面白いんですもん!』
 魂のほうにムラムラしちゃっている薔は、本体のほうのナナをおんぶして家路を歩いている。
 夕陽が照らす歩道、眠っているようにしか見えない彼女をおんぶして、彼は端から見れば誰もいない隣に向かって話し掛けております。




 (ものすごく危うげなドイケメンがいらっしゃる……)
 すれ違う人やなんかは鳥肌ものだが思わず惚れ惚れしてしまっている。


 『薔の中に入っちゃうことだってできます!』
 すり抜けられることをいいことに、ナナは彼の腕や肩へとひょいひょい手を当てていたのだけど、

 「いつもは俺がおまえん中に挿ってるからな。」
 『どひゃあああ!』

 さらりと返された一言に、とたんに大人しくなったんだとさ。















 ――――――――…

 “今日はどこかの世界のハロウィン効果でね、ナナちゃんが幽体離脱しちゃったのよ?このままお昼寝してましょうね?豆くん。”
 “うん!”
 気を利かせたわんこたちは、お出迎えをせずお昼寝を続行した。
 あたたかく寄り添って。




 リビングにて、本体のほうのナナをやさしくソファへと薔は座らせた。

 『あのぅ、わたし薔にパンプキンクリームとやらを塗りたいんですけど……』
 「あ?」
 魂のほうでもナナはナナですので、ちゃっかり願望を彼へと伝えてみる。

 「塗るのは構わねぇが、この状態でどうやって塗るんだ?」
 『それはそうなんですよね…』
 薔は彼女のブレザーを脱がしながら、立派に魂のほうへと確かめてくる。
 ナナは俯きがちに悩み始める。
 どうやら、パンプキンクリームを塗ること自体は構わないようだ。




 「おまえだって早く、自分の躰に戻りてぇだろ?」
 『それはもちろんですよ!』
 眠れる本体のほうのナナの隣へと座ると薔はブレザーを脱ぎ捨て、魂のほうのナナは勢いよく顔を上げた。
 そもそも完全不死身のヴァンパイアなのに何をやっているんだという話なのだが、これぞこけしちゃんの禁断小説の威力か、はたまた。
 魂の状態など体験したことはないし、これから先も体験することはないと思われる。
 珍しい体験に浮かれてはいたが、やっぱり彼に触れたいし何より触れてもらいたい。

 その体温が恋しくて堪らなくなっている彼女の魂へちょっと妖しい視線を送り、薔はくすっと笑うとネクタイを解き、

 「今のままじゃ俺とこういうこと…できねぇもんな?」

 本体のナナの耳へキスをした。

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