淫らな悪戯を召し上がれ







 『おおおっ!?何事ですか!?』
 魂のほうのナナは、これまた事態をうまく呑み込めず彼氏へとすり抜けてしまうくらいに近寄り、

 「静かにしろよ、こいつが驚いてるだろ?」
 「眠っているようにしか見えないのだが!」

 薔が一同を諭すように声を掛けると、醐留権は眼鏡越しにベッドで眠っているナナを見た。

 「おい、勝手に見んじゃねぇよ。」
 「すっ、すまない……つい……」
 このやりとりには、こけし姉さんは瞳を輝かせた。
 ナナは思わず、クリームについてを思い出してしまい真っ赤となる。
 そんなナナの魂のほうの姿は、薔以外誰にも見えてはいないようだった。




 「へえ…」
 自分にしか彼女の魂が見えていないということには、薔はかなり満足した様子だ。

 「やっぱお前らには見えてねぇんだな、俺のナナだから当然か。」
 彼は不敵な笑みを浮かべ、慌てている一同をまるで見下している。

 (なにこのホラーな展開…)
 周りは青ざめ、後退った(こけしちゃんの場合はやはりそれ相応に変換を)。
 もはや薔を引き留めることは、不可能だと恐怖におののく。





 「帰るぞ?ナナ、」
 『あっ、はいっ!』
 薔は本体のほうのナナを抱きかかえ、魂のほうを促すといったん帰り支度をするため教室へと向かって行った。




 「ハ、ハリーさんにお願いしたほうが、いいのかしら……」
 ハンカチを取り出し、泣き出す葛篭先生と、
 「いえ、とりあえずはそっとしておいてあげるべきかもしれませんよ?」
 眼鏡をくいっとさせるゾーラ先生。

 教師ならまずは病院に、が適切なところだと思われますが、この場合はこれで良かったのかもしれません。

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