淫らな悪戯を召し上がれ
『はっ!わたしは何をやってたんだ!?授業は!?』
セクシーな妄想をした後に気を失ってしまったナナは、ようやく目を覚ました。
授業のことを気にかけてみるとは、何とも珍しい。
『んんん?何か、変な感じだよ…』
そしてナナはだんだんと、自分に起きている異変に気づき始めた。
どうやらここは教室ではなく保健室のようで、自分の両足は地についていない感じ。
目の前には脚立を使わなければ立て掛けられないような位置にある、時計が見える。
そんななか、
「ナナ、おい、ナナっ、」
下方から心配そうに彼女を呼ぶ、薔の声が聞こえてきたのだ。
『はいっ!』
元気よく返事をしたナナは、すぐさまそちらを見る。
高く挙げた手は天上をすり抜けたのだけど、映り込んできた光景に唖然のナナはそのことにまったく気づいてはいなかった。
「おまえ、目ぇ覚まさねぇなら襲っちまうぞ?」
『ほえええええええええ!?』
目を覚ましていても襲われる確率は非常に高いのだが、宙に浮いているナナは保健室のベッドで眠っているような自分の姿と彼の台詞に驚愕した。
「もう一回キスしてやるから今度こそ目ぇ覚ませよ?」
『すでに一度チューはされたんですかぁあ!?』
眼下で再びのキスを落とされそうになっている自分のほうへと、ナナはもがくように近づいていって、
『薔っ!わたしはここです!』
どうやら魂となってしまったらしい彼女は一所懸命に、彼へと声を掛けた。
魂とは言っても、上がもやっとなった塊とかではなく、姿はちゃんとそのまんまのが透けているような状態だと思ってください。
ナナは薔の肩に触れようとするものの、すり抜けてしまって触れることができない。
『何ですか!?これは――――――――――っ!』
事態がまったく呑み込めず、魂のほうのナナは自分の手のひらを凝視する。
「ナナちゃぁん、大丈夫かなぁぁ…」
「キスは一度したのだな…」
「薔くんも大丈夫かな…」
「羚亜くん優しい…」
「私には何もできないわ…」
保健室のドアはちょっとだけ開いており、こそこそとこけしちゃんと醐留権と羚亜と愛羅と葛篭は、まるで白雪姫と王子なふたりを眺めていた。
ナナがぶっ倒れたのは最終授業前だったために、今現在はばっちり放課後となっております。
そもそも、醐留権と葛篭は教師なのだからもっと緊急事態っぽい対応を取ってよ。
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