愛玩性教師
「俺ん家まで送ってよ、先生」
もう日が暮れかけた駐車場で突然声を掛けられ、私はひやりとした。
今日は土曜日、部活をしていない彼はこんな時間まで学校に残って何をしていたのだろう?
また女の子を抱いていたのだろうか?
それなら安心するべき事態なのに、私の心はちくりと傷んだ。
嗚呼、きっと、こんな最低な男の餌食となる相手の女の子を、心配しているだけに違いない。
自分に言い聞かせて、私は振り向く。
「そういうことは、ちょっと……」
きっぱり断ろうものなら、何をされるかわからない。
私はなるべくやんわりと断ろうとして、口ごもった。
「それじゃ一人で帰っても辛いだけでしょ?」
彼は笑って、勝手に私の車の助手席へと乗り込む。
リモコンキーでロックを外したのを、ちゃんと確認した上で彼は声を掛けてきたのだ。
私はくちびるを噛みしめ、運転席のドアを開けた。
初めて彼を隣に乗せることになぜかドキドキしながら、私が運転席へ乗り込むと、
ヴヴヴヴヴッ――――…!
「……っあっ!?う…っ」
不意に玩具の振動をかなり上げられてしまった。
「今日はお仕事中にイっちゃったりした?」
彼はニヤニヤと笑いながら、ガクガクとふるえる私を見ている。
「イ…って、な…っ、あ…っ」
強がる私は嘘をつく。
誰にも気づかれずにすることが、どれだけ大変で苦しかったことか。
「ふぅん」
何もかもお見通しといった感じで、彼は振動を一段階緩めた。
「早く車出しなよ」
感じている私を、お構いなしに彼は促す。
こんな危うい状態で運転してもしガードレールに突っ込んだりでもしたら、私はこの子と心中か……と、そんなことを考えながら私はゆっくりと車を発進させた。
「週末っていつもさ、俺ん家、誰もいねぇんだよね」
窓の外を見ながら、彼は言葉にする。
「そ、そう……なんだね……」
イけてしまいそうな私は、だからどうしたという気持ちを必死で手繰り寄せ、曖昧な返事をした。
それきりしばらく、無言が続いた。
彼の父親は名の知れた市議会議員だ、一度行くはめになった彼の家は高級住宅街にあったけれどその中でもとりわけ目立つほどの豪邸だった。
けれど、家の中には生活感というものを感じられなかった。
彼はいつも週末、家に一人でいたのだろうか?
いやいや、それならいくらでも女の子を連れ込むことができたのか。
前に一度いきなり彼に呼び出しを食らって、足を踏み入れることも憚れるような彼の邸宅のリビングで無理矢理抱かれたことを私は今でも鮮明に覚えている。
思い出すとすぐに中は玩具を締め付け、私はイキ声を死に物狂いで押し殺した。
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