邪魔な焦がれ人








 日曜日、彼はまた休日を返上して仕事へ出掛けていった。
 この日は男については珍しく、何も頼まれなかった。そして男は昼下がりになっても、いっこうに起きてこなかった。
 午前中には止むはずの淫雨はまだ弱々しくつづいている、私はぼんやりと窓の外を眺めながら、彼の家の庭は殺風景だと思った。広いのに、何もない。

 隣の家の住人には会ったことはないのだけど、庭の手入れをこまめにする人ではないようだ。生い茂った雑草が雨に項垂れている。
 せめて、ここの庭は、花できれいにしてあげたい。広い庭だから、季節ごとに色を変える木を植えるのもいいかもしれない。
 私はとりとめのないことを考えながら、男が起きてくるのを心中では待っていた。











「どっ、どうしたの!?それ、大丈夫!?」
 午後3時頃、ようやく起きてきた男の顔を見た私は、青ざめた。あんなに美しかったのに、右の頬に痣ができて腫れ上がっている。
「……別に……」
 ぽつりと答えた男の目は虚ろで、一晩で気の毒なくらいやつれたように見えた。

 冷やしておかなければと思い、氷の用意をしようとした。
 まさか……彼が?
 私は背筋がぞわりとして、えもいわれぬ恐怖に駆られる。





 やがて、袋に詰める寸前だった氷たちは、ばらばらと床に散らばった。
 いつしか小降りになっていた雨は、すっかり止んでいる。

「ん…っ!?んう…っ」
 無理矢理に奪われたくちびるが、熱くなる。手当てをしなければならないとわかっていても、逆らえない。
「…――――――あんたが羨ましい…」
 泣きそうな表情でキスをしてきた男は、私をキッチンの床へ押し倒した。背中に当たった氷が弾け飛び、腕を押さえつけられた私は力任せに服を引き裂かれる。

「ダメ…っ!頬…っ、冷やさないと…っ」
 服を引き裂かれたあと、私の口から出たのは心配の言葉だった。男にしてみれば、何の意味にもならない不要な美辞麗句だっただろう。
「そんなのはもう要らない……」
 まるで譫言みたいに吹き掛けた男は、固い床のうえではしたなく濡らしている私の中へいきなり挿入してきた。

「あっあ…っあっんんっ、あ…っ」
 躰を反らした私は激しく、突かれ始める。避妊はされていない、直に男を感じている。

 ズチュッ…ズチュッ――…!

「俺に犯されて濡らすなよ」
 絶え間なく腰を振りながら潤んだ瞳で見下ろした男は、濃厚に繋がっている状態で私にキスを落とした。

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