※※第352話:Make Love(&Sex aid).51
















 「……この際なので、はっきりさせておきましょう……」
 腕を組んだ醐留権は溜め息をつくと、大胆不敵な視線を自分に向けている夕月へと問いかけた。

 「あなたは薔のことをどう思っているんですか?たまに日本に帰ってきた時にしか気にかけないくせに、彼に何かあればまるで我が子のように甘やかす。……私はあなたを見ていると、あまりの無責任さに腹が立ちます。」
 問いかけのあとには、鋭い視線を返しながら本音をぶつけた。
 一緒にいる時間なら、断然、勝っている。

 なのに薔の心を巣くう夕月はどうやっても取り払えないのが、腹立たしかった。
 本気で無責任だと思っているわけではない、むしろきちんと責任を持って問題を収束させてゆく夕月の姿勢に、嫉妬をしているだけだった。




 「俺はいつでも薔を想っている……それは先生もわかった上で、嫉妬をしているはずだ。」
 夕月は醐留権の本心を見透かしていた、ただの無責任だと思っているのなら、そこまでの激しい嫉妬を燃やさないことを、知っていた。
 ふたりは共通の愛を抱えている、けれどわかちあえない、それは共に貫くのは非常に困難な愛だからだ。

 「……あなたには敵いませんね。」
 苦笑をした醐留権は力無く腕を下ろした。
 そのまま後ろの窓にもたれ、眼鏡を光らせる。



 「そうですよ、嫉妬しています。いえ、嫉妬だなんて言葉は生温いほどに、あなたを憎んでいます……」
 醐留権と夕月は互いに、愛を屈しない眼差しを交わした。
 一番にわかりあえる存在が、最もわかりあえない存在だった。

 「その憎しみで俺から薔を奪えるのなら……とことん憎めばいい。」
 勝算は見えているとでも言いたげに、夕月は笑った。
 沈む夜を背に憎みあう男たちは、美しかった。












 「…――――こういうバトルもぉぉ、あっていいと思うのよねぇぇ……なぁんでもいけちゃう美形ってぇ、最高ぅぅっ。」
 こけしちゃんはうっとりと溜め息をついた。
 前回からの続きでややこしくなりましたが、薔を奪いあうという設定はもちろんこけしちゃんの妄想でした。

 今、夕月は日本に帰って来ているらしいので、対峙のために醐留権邸へ乗り込んだりとか、ぜひともしてもらいたいものである(全く違う案件でなら絶賛乗り込み中だけど)。
 こけしちゃんの脳内はじつに平和だったことが判明したところで、現実に引き戻します。
 が、妄想の世界はまだまだ続きます、なにせとことん自由なので。

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