※※第351話:Make Love(&Amatory).212
およそ一週間後に迫っていても、醐留権がファッションショーの話を持ち掛けてくる様子は見受けられなかった。
むしろゾーラ先生の脳内は、こけしちゃんとまたいかがわしい密会を交わしたい気持ちで半分いっぱいとなっており、そのことについて切羽詰まってはいたが父親が勝手に持ち帰った企画については切羽詰まっていなかった。
洋子の行方不明疑惑も、表沙汰になってはまずい家柄なため(教師やってる次男は生徒と付き合っているくせに)、内々に捜査を進めていた。
いかがわしい思考意外は母への気がかりばかりで、醐留権先生はむしろファッションショーのことなどすっかり忘れていた。
「……と言うことで愛羅さん、提案料の話はなかったことにしてもらえないかな?」
羚亜は、醐留権の母洋子が行方不明になったらしい経緯を説明してから、遠慮がちに懇願してみた。
「それは一大事じゃん、羚亜くん!でも提案料は上乗せされるべきじゃないの?あたしの提案のおかげで、醐留権先生のお母さんが緊急事態だって気づくことができたんだから。」
「あ、そっか!ありがとう!」
緊迫した雰囲気になった愛羅は、彼氏を即座に上手く丸め込んだ。
上手く丸め込まれた羚亜は申し訳ない心持ちになり、子羊感満載でぺこりとあたまを下げる。
婦人警官のコスプレをさせた彼に悪戯を仕掛けたい目論見には、揺るぎがないのだ。
「てことは、超ミニスカにプラスして、エッチなパンツとあと、網タイツも穿いてもらおうかな。」
「ちょっ……あの、そんな性犯罪を助長しそうな婦人警官……世の中にいる?」
「SMプレイの世の中にはごまんといるよ?」
「ダメだ!俺どうやっても、愛羅さんには敵わない!」
「わかって良かったじゃん!」
「うん!」
羚亜は結局超ミニスカに、エッチなパンツ(いかにもはみ出そうなやつ)と網タイツ(最終的な用途は破くこと)をプラスされた。
おまけに、彼女のエロ親父論にはどうやっても敵わないことを改めてつくづく思い知った。
ただちに降伏するしか、手立てはなかった。
バカップル全開のこのふたりは、いつものように平和だった。
羚亜が愛羅の餌食になることもいつも通りだし、よくよく考えてみなくとも羚亜はヴァンパイアなのだけれどその威厳とか妖しさをまったく発揮できていないのもいつも通りなのである。
提案料プレイのために、羚亜は土曜日のバイトを休むことになっていた。
彼女に命じられて、従うしかなかったので。
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