※※第363話:Make Love(&Sex aid).54
ナナと薔が夕月に連れられやって来たのは、ショッピングモールだった。
夕月は、修学旅行を控えたナナと薔にあれこれ、買ってくれる模様だった。
「……今日は如月さんに会いに行くんじゃなかったのか?」
「如月は急遽デートになったんだよ。」
「絶対に嘘だろ……」
修学旅行の準備だとは聞かされていなかった薔は怪訝な表情で、夕月はただ面白そうに笑っていた。
やはり夕月の前だと妙にしおらしくなる彼氏が可愛すぎてうっとりしたナナだが、うっかりすると声を上げそうになり慎重になる。
まさかこんなにも人の多い場所だったとは。
玩具を仕込まされた淫靡な躰を、誰にも気づかれないようにするのは難しい。
難しいほどに俄然、燃えてしまうものだけれど。
「――――予定が狂ったな、大丈夫か?」
不意に、薔が耳打ちをした。
感じてビクッとなったナナは、膣がキュウキュウと狭まるのを感じる。
彼は意地悪をして、わざと耳打ちをしたのだろうと、すぐに悟った。
わざとでなければ、誘うような吐息で密やかに触れて感じさせたりしないだろう。
薔がそんなことするなら大丈夫じゃないです……と、ナナは答えたくても、感じた直後に声を出すのは危険だった。
なるべく息を整えてから、言葉にしなければ。
そう思っているうちも、立ち止まってはいられない。
ヴヴヴッ――――――…
バイブは緩やかな振動をしており、周りの音はすっかり振動音を掻き消した。
玩具を仕掛けてあり、ばれるのを必死に我慢している状態なら、ある意味うってつけの場所かもしれない。
「必要なものがあったら何でも言えよ?」
薔なら特に手を出さなくても修学旅行の準備くらい容易にできると知っていたが、無性に世話を焼きたくなった夕月は単なる自己満足に過ぎないことも知っていた。
世話を焼いて、必要なものを手に入れたいのは結局自分なのだ。
面白そうに笑った薔は夕月の気まぐれに付き合うことにした。
ナナの様子を見て愉しむことがじつは第一の条件なので、夕月には密かに申し訳ないと思っていた。
「夕月さんて、時々ほんと父親みたいになるよな。」
と、さらりと言葉にした薔は、父親がほんとうにそのような存在なのかを確かに知っているわけではない。
ただ何となく、父親みたいだと思うことがたびたびあった。
「――――――――…」
夕月は思慮深げに黙っていた。
薔の両親と交わした誓いがなければ、とっくに、自分は実の父親だと名乗り出ていた。
夕月が薔に真実を黙っているのには、無論理由があった。
それはまだ誰も知らない理由だった。
けれど薔は果たして、何も知らないままでいるのだろうか。
花子の親のことですら、ちゃんと知りながらずっと知らない振りを続けているのに。
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