※※第360話:Make Love(&Intercrural sex).219
ほんのりと明るいオフィスを、艶めいた息づかいが昇っていた。
躰を繋げるために会ったわけではないとわかっていても、また離れてしまうそのときまで、繋げずにはいられなかった。
いずれ離ればなれになると知っていても美咲がこれまで夕月に避妊を望まなかったのは、ヴァンパイアだからに他ならなかった。
それを隠して、夫婦だからという理由で、彼を欲しがった。
忘れずにいた快感が、瞬時に鮮やかに甦る。
「あっ…!……あっ……」
夕月しか与えてくれない感覚に陶酔し、美咲は絶頂を得た。
「大丈夫か?少し、休むか?」
何度もイっている彼女の体力を心配して、本当は休みたくない夕月だったが優しく声を掛けた。
「……っん、鎧さんは、それでいいの?」
優しさだとわかっていたが、焦れったくなった美咲は彼を締めつけた。
時間は限られているのに、休ませるほどの余裕があるのは、悲しいものでもある。
「それでいいならとっくに止めてる……」
失笑した夕月はまた、彼女を責める。
狭くなった中へと、優雅に突き入れる。
「美咲に何も確認せずに、呆気なく終わらせてるよ……」
夕月はなるべく長く繋がっていたい気持ちから、激しくせずにいた。
激しくして、果てて、終わらせて、彼女を早く帰してあげるのが賢明だとわかっていた。
でも、帰したくない気持ちが全てに勝っている、休みたいのか確認したのも本当は美咲のためではなかったのかもしれない。
「あっ…あっ、あ…っ、」
美咲は何年振りかに、演技ではない喘ぎ声を上げていた。
自分はなぜあの男に捕まってしまったのか、夕月に抱かれながら話すこともできたが、今はまだそのときではないように思えた。
彼だけを感じているときに、他の男の話をすることは、できなかった。
それに美咲はまだ、男の真の目的を知らない。
「あ…っ、鎧さんっ……!」
必死でしがみついた美咲は、振り絞って告げた。
「私は……あなたのものです、あなたが許してくださるのなら、必ず……ここに帰ってきます……」
永遠に、終わらなければいいと思う時間ほど、あっという間に過ぎ去ってしまうものだ。
気づいた頃には、想いだけが消えずに残っている。
消えずに残っているのなら、ここにいつか帰って来たい。
「ずっとここにいたくせに……よく言うよ、」
強く抱き返した夕月は、再び彼女に絶頂を与えた。
「帰してくれないのは美咲の方だろ?……だから、俺は待っていられたんだ……」
それは、心の在処を示していた。
瞬く間に消える時間が、消えないようにと、愛しあった。
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