※※第360話:Make Love(&Intercrural sex).219








 「ええっ!?メロンパンなのに、材料にメロンを使わないんですか!?」
 後片付けも終え、寛ぎの時間の最中に一驚したナナはぴょんとソファを降り、彼を見た。
 「そもそもメロンは見た目を示してるからな。」
 さらりと答えた薔は隣に座るよう促す前に、彼女の腕を引っ張り抱っこして座らせた。
 至福の体温に包まれたナナは、スマホでメロンパンのレシピをいくつか見せられる。

 「これとか可愛くねぇか?」
 「わあ!カメさんの形をしたメロンパンですか、可愛い!」
 メロンパンにも様々なレパートリーがあり、カメをあしらったものを見た彼女は作るのが楽しそうで心が躍った。
 カメと言えば、何も卑猥なことを連想させたりしない健全でご長寿な生き物である。

 「他にもたくさんあるんですね!」
 「うん、」
 ナナは興味津々というよりドキドキを何とかしようとはしゃいでおり、落ち着きはらっている薔は他のレシピも見せようとゆびを動かしていた。
 ナナはいつの間にか、画面ではなく彼のゆびに視線を奪われ、うっとりしている。

 「もっとよく見せてください……」
 「ん?」
 うっとりしたままゆびをもっとよく見せてほしいと願い出たところ、薔はスマホを近づけてくれた。
 さすがにこの状況で、ゆびを、だとは思わないだろう。


 ゆびのことを言ったんですが……とは、今となっては恥ずかしくてナナは言えなかった。
 抱っこされていると気持ちよくてくすぐったくなり、これ以上なく落ち着ける場所なのに心は落ち着かない。

 「まずは簡単なのがいいよな?」
 一緒に作るのなら今度こそナナは彼の手作りメロンパンを堪能できて、薔も彼女の手作りメロンパンを堪能できた。
 ひとりで作るわけではないので真っ黒に焦げたりはしないと思われる。
 「そう、ですね……」
 熱に浮かされたみたいな気分になり、ナナはあたまがぼーっとした。
 眠いのだと勘違いしてしまいそうなくらい、雰囲気が目映い。


 「どうした?乗り気じゃなくなったのか?」
 返事が小さくなったことにちゃんと気づいた薔は彼女のあたまをぽんぽんした。
 普段から料理はまったくと言っていいほどしないので、レシピを見ていて気が遠くなったのなら無理もない話だった。
 「えっ?そんなことないですよ?」
 あたまも気持ちよくなったナナは彼を心配させてはいけないと、慌てて答えるもののやっぱり心地がよすぎた。



 「ふーん……」
 あたまは撫でるのに切り替えると、薔は突然、耳もとにキスをして笑った。

 「顔が見たいな……耳まで赤くなってる、」

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