※※第360話:Make Love(&Intercrural sex).219
帰ってからさっそくメロンパン!となるわけもなく。
いつものようにナナは勉強をして、いつものように薔は夕食の準備をした。
メロンパンを焼くにはそれなりに時間もかかるため、休日とかにまったりと楽しんだほうがいい。
メロンパン作りを忘れたわけではなかったけれど、メロンパンとは関係なしに平和な時間が過ぎていった。
――――――――…
薔とのとある約束のために滞在期間を延ばしていた夕月は、一人、オフィスで物思いに耽っていた。
美咲と共に過ごした時間を思い出し、今彼女はどのような想いで離ればなれの時間を過ごしているのか、想いを馳せる。
すると静かに、ネオンが射し込んでいた部屋にふと、ノックの音が響いた。
来訪者は誰なのか、夕月には検討がついた。
「――――俺は何も怒ってねえから、入れよ、美咲……」
控えめなノックの音が、美咲を連想させたのかもしれない。
ゆっくりとドアを開けて、俯き加減におもむろに部屋に入ってきたのは、妻の美咲だった。
何も怒っていないと言ったのは、彼女が打ち明けたこと全てに対してという意味だ。
「……鎧さんのおかげで……あの男のガードが緩くなったの、……私、どうしても伝えたいことがあって……」
俯いたまま、美咲は口にしかけた。
「言わなくてもわかる……」
制止させた夕月は彼女のもとへ歩み寄ってゆくと、目の前に立ち優しい眼差しを落とした。
薔のおかげだとも思った、約束がなければすでに日本を発っていた。
先日は見張りがあり、近づきたくても近づけなかったひとに、こんなにも近づけている。
京矢は深い眠りに就いており、朝まで目を覚ましそうになかった。
夕月の威厳が予定を狂わせたことを、男は痛いほどに知っていた、今は憔悴していつもの嫌みったらしい性格は息を潜めている。
「だから、怒ってはいないと言っただろ?」
夢のようだと表現するにはあまりにも温かく現実味を帯びた時間に、魅了されて、思わず夕月は美咲の頬に触れた。
最初はびくっとして躊躇う様子を見せた美咲も、拒むことはしなかった。
見つめあったふたりは、キスを交わした。
美咲は無我夢中で夕月に抱きつき、愛するひとと交わすキスの喜びをひしひしと思い出していた。
妻を抱きしめて、夕月は何度もキスをした。
ネオンが淡く、幻想的に照らし出す部屋のなか、本当の再開のひとときを味わう。
「怒ってもいいのに、優しい人ね……」
瞳を潤ませた美咲は腰を抱かれ、ソファに案内される。
「優しいわけじゃない、美咲を愛してるだけだ……」
彼女の髪を撫でて囁いた夕月は、スーツのジャケットを脱いだ。
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