※第6話:Game(+Foreplay).4




 お昼休みになりました。

 (あれぇ?今日、どこを探してもこけしちゃんがいないんだけど。)
 ナナは廊下を、キョロキョロと歩いていた。
 (さっきすさまじい言い分を目の当たりにしちゃったから、こけしちゃんに癒やしてほしかったんだけどなぁ。でもあのひと、助けてくれたんだから、ちゃんとお礼は言わないと!)
 そう思いながらナナは、こけしちゃんをひとりで捜索していた。
 

 しかしこけしちゃんはこの日、学校にはいなかった。
 平日というのに学校を休んでまでして、同人誌の即売会に足を運んでいた。
 こけしちゃんはとてもおだやかでのほほんとした性格だが、同人誌には熱い魂と金銭をそそいでいる。



 (こけしちゃーん!)
 キョロキョロ、

「おい、そこの覗き魔。」

 ぎょおぉぉぉぉぉお…………!!

「なんですか!?廊下で声かけられるとムダにときめくんで、やめてください!」

 ナナのうしろに、すさまじい言い分を目の当たりにはさせたが、結局はとんでもないやり方で彼女を助けてくれた、薔が立っていた。

「だれの許可を得たうえで、なにを探してんだ?お前は、」
 え?
 ………探しものに、許可、必要でした?
「え、えーと、こけしちゃんです。」
「なんだ?それは。お前には妖怪が見えるのか?」
 ぇぇぇぇえ………!?
 妖怪以上のものなら、見える自信あるよ!


「こけしちゃんは、とってもかわいくて優しい子なんです!そもそもこないだわたしがこけしちゃんと楽しく語らっていたとき、アナタさまはお隣にいらっしゃいましたよ!?」
「ふーん、」

 ……………………は!!
「あ、あの、」
「なんだ?」
「先ほどは助けてくださり、ありがとうございました!」
「あ?」

 ペコリとあたまを下げたナナに、薔は言った。


「なんのこと言ってんだ?お前は、」



 …………………はい?

 はぃぃい!?



 (えーっ!このひとあんなすごいことして助けてくれたのに、覚えてないよ!と言うより当たり前にしか思ってないから、わたしにとってはものすごくややこしいし、厄介だよ!)

 いつもはあんなにも、“ありがたく思え”って言うクセに――――――――っ!!


「おい、」
 ……ドキッ!
「な、なんですか?」

「持ち出す予定で声だけはかけてやったが、お前がどーしても持ち出されてぇなら、聞いてやろう。」

 わたし、持ち出してって、言いましたかね?


「お前、料理はできるのか?」
 …………はぃい?


「え、えーと、エスカルゴとか」
「要するになんもできねーんだな?」

 …………………ひどい。


「まぁいい。お前、今日は俺の看病をしろ。」
 ……え?
「逆にこの俺が、お前を手あつく看病してやる。」
 …えぇぇえ!?

「よって、引き連れて帰るぞ。ありがたく思え。」


 やだ――――――――っっ!!



 窓の外に向けて、無言の絶叫を放ったナナ。



「そこにいるのか?お前だけに見える妖怪は。」


 もう何を言い返すのもイヤになるくらいに、行きたくないようで行きたいであります!


 ナナはおそらく、ド変態の扉は開けてしまっていた。






 帰り道は、すっ飛ばします。
 無言だっただけですから!

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