※第6話:Game(+Foreplay).4





「さっきから、ナナの声が残響のように聞こえるのだが。」
 二階の寝室にて、ナナ父は新鮮な水道水を飲んでいた。
 ヴァンパイアも、水分は欲します。
「本当ね、ここまでナナの声を引きずるなんて、私たちは本当にあの子のことを、愛しているのよ。」
 幸せな夫婦だな。



「でもちょっと、聞こえすぎじゃないか?」
 ナナ父は、窓から外を見た。


 ……………あれ?
 ………………あれれれれぇ?


「ハニー、」
「なに?雅之、」
「うちの娘、門のところで、“遠目に見ても何から何までカリスマモデル以上の男の子”に、ナンパされてるんだけど?」
「なんですって!?」
 ガバッ!
 ナナ母の食いつきようは、凄まじかった。

 ハニー!キミは本当に、娘を愛しているんだね!



 (うわぁー。なにあの子?おいしそうにもほどがあるだろ。)
 ナナ母、あなたは強い!





「……………………。」
「ど、どうしたんですか?」
「行くぞ。」
 グイッ
 薔はナナの腕を掴み、力強く歩き出した。
「ちょっ、どうしたんですか!?」
 そしてあわてふためくナナに、
「お前の母親は、俺を食う気だ。」
 と、言った。
 …………………は?
「いいのか?お前が食うまえに、おのれの母親が俺を食っちまっても。」
 いや、わたしそもそもアナタを、食べるつもりがまったくないんですけど……………。
 ……………………たぶん。




 これはふたり揃っての、登校ですね。

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