第5話:Game(+Spread).3




 (え………?肩のあたりがものすごくあっついんだけど、なに?これ、)

 ナナが目線だけ傾けて見てみると、


 ………………えぇえ!?




 肩に、薔が、あたまを乗せていた。




 (どぎゃ――――――――っ!!)


 こころで絶叫するナナ。




 (なななななにをなさるおつもりなんだ!?どうしたらいいんだ!?この場合は!!)
 あたふた赤面していたナナだが、




 ………………あれ?




「ど、どうしたんですか?」
 恐る恐る、薔へと尋ねてみた。

「……………………。」

 返答はなし。

 ひたいに触れてみると、


 (さっきよりめちゃくちゃ熱いよ――――――っ!!)

 それより、おでこにさわっちゃったけど、エッチなコトもなにも言わないから、このひと明らかに意識ないよ!



 (ど、どうしよう……?担架とか持ち出したほうがいいと思うけど、そんなことこのひと絶対に許さないし、)



 ………………あ!
 そうだ!




 こういうときのためにつかうなら、能力(ちから)って本当に素晴らしいよね!
 “だれかのため”につかう日がくるなんて、思いもしなかったよ!



 ナナは例の指輪を外し、ポケットにしまい込んだ。
 ヴァンパイアの能力には、筋肉を増強するチカラも、もちろん含まれております。




 (よいしょ、)
 ナナは薔を、“お姫さまだっこ”した。




「先生!」
「はい?」
 振り向いた横科の口があんぐりと開くまでには、そう時間はかからなかった。

「ど、どうしたの?三咲くん?」
「保健室行ってきます!」

 ダッ!




 走り出す、“薔を抱えた”ナナ。




「でぇえ!?そんなこと言って、またキキキキキスとかしに行くんじゃないの!?」
 横科は、扉めがけて必死で走り、
「学校でそれ以上は、ダメだよ――――――――っっ!!」

 と、すでにだれもいない廊下に向かって、叫んだのであった。

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